「正直に言えば、もともと一緒になるべきじゃなかったんです。中道が分かれると聞いて、ようやく元に戻るのかと思いましたよ」
筆者が取材した首都圏在住の30代男性の創価学会員は、中道改革連合(以下、中道)の分裂について、さばさばした口調でそう語った。
1月16日に立憲民主党と公明党の出身議員によって結党された中道改革連合は、2月に行われた解散総選挙に大敗した。その後、参院側を含む立憲・公明との3党の合流協議は折り合わず、8月31日の党首会談で合流断念が正式に決まった。
9月9日には、立憲系議員による新党結成と公明系28人の公明党への復党に向けた方針が示され、結党から約8カ月で事実上の解体方針が決まった。ただし、衆院では統一会派「中道」を結成し、政策立案や選挙活動で協力を続けるとしている。さらに、9月16日には、小川淳也氏が立憲系の新党名を「民主改革の会」とすると表明した。
こうした経緯を、冒頭の男性のように「そもそも無理な組み合わせだった」と見ていた学会員がいる一方で、中道に期待を寄せ、分裂を残念がる人もいた。取材を進めると、同じ年代でも中道への印象が異なり、合流への賛否だけでは分裂への受け止めを説明しきれないことが見えてきた。本稿では、中道改革連合の分裂を創価学会員がどのように受け止めているのか、今回の中道分裂は今後の公明党に対してどのような影響を与えるのかについて論じたい。
さて、現場の学会員の本音を紹介する前に、まず公明党と創価学会の執行部がこの分裂をどう説明したのかを見ておこう。
中道の分裂が決まった直後の9月12日から13日の週末、各地の創価学会の会館やオンラインで会合が開かれ、公明党の地方議員が学会員に向けて分裂の経緯を説明する場が持たれたという。
取材した学会員によると、ある地方議員の説明を要約すればおおむね次のような内容だった。
「結果的に参議院の立憲と合流できなかったことは非常に残念。最終的な合意形成の段階で、公党間の約束が破られたことには憤りを感じている。ただ、それでも公明党は中道政治の実現を目指して邁進していく。衆院選で有権者のみなさんからいただいた支援の重みを感じながら、これまで以上に政治改革に取り組んでいきたい」
この地方議員は、合流に至らなかったことへの不満を示すとともに、今後も中道政治の実現を目指す方針を説明したという。
同じ会合では、創価学会の会長である原田稔氏の言葉も紹介されたという。原田会長は今回の分裂について「政治の次元の話ではあるけれども、必死に応援してくれた同志に申し訳ない」と述べたと、複数の学会員が証言している。政治の責任は公明党にあると線を引きつつ、選挙を担った会員には頭を下げる。執行部として、ぎりぎりの言葉選びだったのだろう。
さらに印象的だったのは、ある地元幹部が、池田大作氏の小説『人間革命』を引きながら「地方選挙こそ公明党の原点である」と訴え、来年の統一地方選に向けてハッパをかけたという話だ。
ここで少し歴史を補足しておこう。創価学会は1954年に政界進出の窓口となる「文化部」を設置し、翌1955年4月の統一地方選で初めて選挙に挑んだ。公明党の公式サイトの「写真で読む公明党の55年」という特設ページによると、文化部員54人が各地の議会に立候補し、53人が当選した。
国政選挙への進出はその翌年の参院選からであり、公明党のルーツは、まさに地方議会にあるのだ。
だからこそ、学会内部では「地方選は絶対に負けられない選挙」という位置づけが今も共有されている。『人間革命』の引用は、単なる歴史の回顧ではなく、「原点に戻って戦え」という現場への号令だったと見るべきだろう。
会合の最後には「党員登録」と「公明新聞の購読拡大」が呼びかけられたという。分裂で傷ついた組織を、なんとかして立て直したい。拡大路線の言葉を並べる執行部の意図がにじみ出ていた。
そもそも、創価学会員は中道改革連合に対して、どのような印象を持っているのか。
立憲と公明党の関係性を象徴する出来事として、2017年の衆議院選挙において、当時、公明党代表であった山口那津男氏が兵庫県神戸市で行った街頭演説がよく知られている。山口氏は『鉄人28号』の主題歌の替え歌を披露し、そのなかで「たたきつぶせ立民共産」と歌ったことがある。このことからも、必ずしも公明と立憲との距離は近いとはいえない。ただ、今回取材した会員の受け止めは一様ではなかった。
今回取材した50代以上の会員のなかには、立憲出身議員に好意的な人が多かった。とりわけ、中道の代表を務めてきた小川淳也氏に親しみを感じ、これまで公明党議員に求めてきた「クリーンさ」を見出していたという。
一方、今回取材した30代以下の男性信者(創価学会内では「男子部」と呼ばれている)のなかには、立憲への強い抵抗感を抱く人もいた。若いころに見聞きした民主党政権に否定的な印象を持ち、そのイメージを立憲にも重ねているという。
民主党やその流れをくむ立憲は、選挙や国会で自公政権と対立する側にいた。公明党を支援してきた学会員にとっては、長年、対立相手として意識してきた政党でもある。民主党政権への印象に、こうした対立関係の記憶が重なったことも、立憲への抵抗感につながっているのではないかと筆者は考えている。
加えて、YouTubeやTikTokなどで立憲批判のショート動画に触れ、小川氏の話し方を揶揄する「オガジュン構文」を話題にする若い男子部員もいた。
中道に期待を寄せていた会員は、分裂をどう受け止めているのか。都内在住の60代女性は、こう嘆く。
「小川さんのことが本当に好きになったし、立憲にも素敵な議員がたくさんいると分かって、これから一緒にやっていけるのが楽しみだったんです。参院と合流できないのは政策の問題があるからしょうがないけど、どうして衆院まで一緒にやっていけないのか。本当に残念です」
立憲出身の候補者に期待していたのは、中高年の会員だけではない。2月の解散総選挙で中道候補を支援した都内在住の30代男性は、当時の様子をこう振り返る。
「立憲出身の若い男性候補が、真剣に選挙を戦っているのが伝わってきました。今回は、学会側から選挙ボランティアの連絡がなかったため、自分たちでボランティアの窓口を探したり、街頭演説の応援に行ったりしました。立憲出身候補は学会員の支援に対して心から感謝してくれるように見えたんです。だからこそ、落選したときは本当にショックでした。ある意味で、身内である公明党の候補を応援するときよりもショックが大きかったです。私の周囲には、泣いて悔しがった中高年女性の学会員さんもいました」
同じ30代男性でも、冒頭の男性と、この男性とでは、中道への思いが異なる。年齢だけでなく、それまでの政党への印象や、候補者を支援した経験にも目を向ける必要がある。合流には抵抗があった人と、候補者への期待を深めた人。それぞれ異なる思いを抱えながら、今回の分裂を受け止めていた。
一方、冒頭で「もともと一緒になるべきじゃなかった」と語った30代男性も、分裂を手放しで歓迎しているわけではなかった。静かに怒りをにじませながら、こう続けた。
「中道は結党時に『選挙目当ての野合だ』とよく批判されていて、当時は投票依頼をした友人にもよくそのことを指摘されました。当時は悔しくて必死に反論したが、参院立民が合流しなかったせいで中道は消滅し、本当に選挙目当ての野合だったってことになってしまいました。自分みたいに立憲が好きじゃないのに中道を応援した身からすれば、あのときなんのために頑張ったのかわからないです」
今回取材した会員には、中道に期待して応援した人も、合流への抵抗感を抱えながら支えた人もいた。分裂への思いはそれぞれ異なるが、自分が重ねてきた支援活動を振り返り、悔しさや悲しさを口にしていた。
少なくない学会員たちが悔しさをにじませるなかで、筆者が確認したSNSの投稿には、中道分裂をめぐって公明党を批判する支持者の声もあった。
そのなかには、プロフィールやアカウント名に「RICE」という文字を盛り込んだ公明党支持者のアカウントもあった。RICE(ライス)とは、公明党支持者の有志が2025年6月4日に生み出したファンネームである。
こうして公明党への支持を表明してきたアカウントが、中道や公明党の判断を批判していた。そのなかには、プロフィール欄で創価学会員であることを明かしているものが数多くあった。
中道の合流協議が難航した8月末から9月にかけて、「絶対に中道分裂はしないでほしい」と公明党執行部に向けて強い口調で書き込むアカウントが相次いだ。なかには、中道の分裂、あるいは公明党が中道から引き揚げることに反対し、賛同を募る署名運動のような投稿も散見された。
では、なぜ学会員はここまで変わったのか。筆者は、転機のひとつが昨年の参院選における「裏金議員への推薦」にあると考えている。
昨年の参院選で、公明党は自民党のいわゆる「裏金議員」に推薦を出した。その一人が京都選挙区の西田昌司氏だ。旧安倍派から411万円の還流を受けながら収支報告書に記載していなかった。推薦決定後の5月には、那覇市でひめゆりの塔の展示について「歴史の書き換え」と発言し、沖縄県議会から抗議を受けている。
沖縄は、池田大作氏が1964年12月に『人間革命』の執筆を始めた場所である。公明党の西田実仁幹事長は2025年5月7日、発言の撤回と沖縄県民への謝罪を求めた。西田昌司氏は発言を撤回したが(2025年5月9日「朝日新聞」)、党は推薦を維持した。
学会員からは「なぜこの議員まで推薦しなければならないのか」という声が上がったという。政治資金の不記載と沖縄での発言が重なり、ネット上では学会員の批判が起きた。今回取材した複数の学会員によると、党が説明動画を公開しても批判は収まらなかったという。
2015年の平和安全法制をめぐっても、SNSで公明党を批判し、反対デモに参加する会員はいた。一方、今回取材した50代男性によると、議員が説明を重ねるなかで納得し、支援に回った会員もいたという。
だが裏金議員の推薦と今回の分裂で問われているのは、政策の是非ではない。「公明正大」「大衆とともに」という公明党の根幹にかかわる指針に背く行為として受け止められた。だからこそ、傷が深いのだ。
中道の分裂では、政党交付金の扱いも論点になった。中道は衆院議員1人を残して当面存続し、2026年の政党交付金約23億円のうち、今後交付される約11億7000万円も受け取る方針だ。党側は衆院選の未払い費用に充て、清算後に組織を整理すると説明している。余剰が生じれば国庫返納も検討するという。
解党を予定している政党が政党交付金を受け取ることは違法ではないが、実体のない政党が、税金が原資となっている交付金を受け取ることに対して批判が高まるのは当然だろう。
2月の解散総選挙で、中道は比例代表で約1043万票を獲得し、42議席を得た。内訳は公明系28人、立憲系14人だった。公明系は比例名簿の上位に載り、28人全員が当選している。その28人が議席を保ったまま公明党に戻る。公明単独ではなく、中道として集めた比例票の恩恵を受けて得た28議席が、すべて公明党の議席になる構図だ。これでは「公明党のひとり勝ち」と批判されるのも無理はないだろう。
こうした動きに対して世間からの批判も高まっているが、創価学会内部でも批判の声が上がっている。取材した20代の男子部員は不満を隠さなかった。
「結局、中道の結党も選挙のためだし、分裂も統一地方選のためにしか見えないです。中道を一部残すのもお金のためじゃないですか。政治のための政治をやっているように見えて、もう見ていられない。国民を向いた政治をやる姿勢を見せてくれないと、もう応援できないですよ」
一方、50代男性の学会員は「地方議会は公明党の原点。ここは負けられないし、自分は今度も頑張る」と語る。支援を続ける人もいれば、党の姿勢次第では応援できないと考える人もいる。取材した会員の受け止めは、一様ではなかった。
来年4月には、自公連立離脱後、初めての全国規模の統一地方選を迎える。
だが、地方選における直近の選挙結果は厳しい。2023年の東京23区の区議選では、公明党は擁立152人のうち8人が落選し、練馬区では4人の候補が落選している。
2025年の都議選でも3人が落選しており、そのなかでも池田大作氏の出身地である大田区で2人の落選者を出している。結果的に、都議会公明党は36年ぶりに全員当選を逃した。国政選挙でも、思わしい結果が出ていない。2025年に行われた参院選では14議席の獲得を目指すも、結果は8議席の獲得にとどまり、現在の公明党が結成された1998年以降最少の議席数となった。
そもそも、創価学会票は学会員の投票だけで積み上がるものではない。友人への投票依頼をもとに学会外の得票を積み上げていくことで「学会票」は成り立っている。投票依頼を受けた友人が公明党に投票してくれなければ、公明党は議席を維持できない。
ここで見落とされがちなのは、これらの友人票の多くが「新規開拓」ではなく、何十年も同じ友人に頼み続けてきた既存の地盤だという点である。取材した60~70代の女性会員のなかには、1人で150人以上の友人に投票依頼をしている人もいた。ただ、選挙ごとに新しく150人を探すのではなく、長年頼んできた友人たちをベースにして、その学会員個人が持つ「岩盤支持層」に投票依頼しているのだ。
だが、長年の友人とのやり取りに変化を感じている会員もいる。50代女性の学会員は、次のように語る。
「一生懸命応援したい気持ちはあります。でも、これまで『今回もお願いね』というひと言で投票依頼をしていた友人から、『公明党は大丈夫なの?』『次の選挙はどうしようかな』と心配されているんです。いままでの頼み方では投票してくれないかもしれません」
自公連立の時代には「与党としての実績があります」と友人に語り、そのうえで地方議員の政策を訴えることができた。だが、軸がぶれる出来事が重なった今、何十年も頼んできた友人がいつものように投票してくれるのか、そして学会員自身がいつものテンションで頼めるのかは、いずれも未知数だ。
ここまでの取材を整理すれば、来年の統一地方選を取り巻く条件は3つ重なっている。①「中道分裂」をめぐる組織内の受け止めの違い、②「裏金議員」の推薦以来、公然化した公明党批判、③「ひとり勝ち」批判のなかで揺れ始めた既存地盤の友人票。つまり、公明党にとって「原点」であるはずの地方選が、連立離脱後もっとも条件の悪い選挙になりかねないのだ。
それまでに公明党が新たな指針を打ち出して信頼を取り戻し、党勢を回復できるのか。それとも、右肩下がりの流れをそのまま引き継いでしまうのか。
「もともと一緒になるべきじゃなかった」はずの新党の後始末を背負い、悪条件が重なるなかで来年の統一地方選を迎えることになる。「最強の組織票」と呼ばれてきた創価学会の集票力で、公明党は「大勝利」をつかめるのか――。
———-
———-
(ライター 片山 一樹)