埼玉県川口市に在留するトルコの少数民族クルド人の団体「日本クルド文化協会」と同協会の代表者らについて、トルコ政府が「テロ組織支援者」に認定、トルコ国内の資産凍結を決定したことが5日、分かった。同国の非合法武装組織「クルド労働者党(PKK)」への資金提供が理由。同協会は今年2月のトルコ地震の際、日本国内で募金活動を行い、約4千万円を集めたという。
トルコ政府が先月29日、公式サイトに掲載した官報によると、欧州や豪州、日本に拠点を置く62人の個人と20の組織についてPKKへ資金提供するなどしたテロ組織支援者と認定。先月27日付で同国内の資産を凍結する決定をした。
このうち日本国内で対象となったのは同協会などと、同協会事務局長で東京外国語大講師のワッカス・チョーラク氏(42)や代表理事(32)らクルド人数人。
同協会は平成27年から活動している一般社団法人で、「クルド人、日本人、その他の国民との友好関係の構築」などを設立目的に掲げている。文化交流活動のほか、地域の清掃やパトロールなどを実施。11月4日には埼玉県警や川口市役所などとの合同パトロールにも参加していた。
2月に起きたトルコ地震では、川口市内やクルド人経営の飲食店などで募金活動を実施。その際、協会事務所の壁にPKK創設者とみられる男性が描かれた旗が飾られていると指摘された。
取材に対し、チョーラク事務局長は「私達はテロ支援もテロ活動もしていない。在外選挙で私達が支持した政党が、真偽は不明だが、その後PKKを支援したと政府は言う。投票と駐日トルコ大使館内で選挙立会人を務めた以外の接点はない。以前も米閣僚の資産凍結をしたように現在のトルコは政権に批判的な者へ報復行動をとる。冤罪であり恣意的な資産凍結だと考えている」とメールで回答。
募金については「日本の皆様にもご支援いただき約4千万円が集まった。トルコの国会議員を通じて被災地で赤十字のような活動をしている団体に渡されてテント村が作られた。その国会議員から贈られた感謝の動画を当協会のホームページに掲載している。議員と政党からの感謝状が日本政府にも届けられた。日本の皆様に再度感謝申し上げたい」と回答した。
【クルド労働者党(PKK)】 トルコの少数民族クルド人の非合法武装組織。「国際テロリズム要覧」2022年版によると、「クルド人国家の樹立」を掲げて1984年に武装闘争を開始、90年以降、国内各地でテロを引き起こしてきた。今年10月にも首都アンカラの内務省前で自爆テロを起こし、警察官2人が負傷した。