2019年の参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件で、公職選挙法違反(被買収)に問われ、東京地検特捜部の検事に供述を誘導されたと訴えている元広島市議の弁護人は25日、最高検の調査結果について「結論ありきで書かれたものだ」と批判した。
元市議、木戸経康(つねやす)被告(68)の弁護人を務める田上剛弁護士が記者会見した。検察側からは調査結果をまとめるにあたり、自身や元市議に対する事実確認が一度もなかったとした上で、「当事者から全く話を聞いておらず、調査は不十分だ」と指摘した。
調査で検事の取り調べを「不適正」と認めたことを評価する一方、担当検事に対しては改善を求める指導にとどめ、懲戒処分しなかった点を挙げ、「甘い対応だ。同じような問題が繰り返されるのではないか」と懸念を示した。組織的な指示がなかったと結論付けた点についても、「本当にきちんと調べたのか。本来は最高検ではなく第三者機関を設置して調べるべきではないか」と疑問視した。
元市議は、河井克行元衆院議員の公判で証人尋問に臨む際に「証人テスト」と呼ばれる事前の打ち合わせが計12回あり、ここでも別の検事から証言の誘導があったと主張している。
証人テストの手法を最高検が不適正とは認定しなかったことについて、田上弁護士は「元市議が記憶通りに(公判で)証言するのであれば、12回もやる必要はない。検事が『これは違う』『あれは違う』と指摘しながら繰り返しやるのはおかしい」と批判した。
10月の1審・広島地裁判決は「検事が不起訴を前提に取り調べたことは否定できない」としつつも、違法性はないとして、元市議を有罪とした。田上弁護士は判決後、担当検事の処分や取り調べの全可視化などを求める要請書を最高検に提出していた。
木戸被告の他にも現職の広島市議と元職ら5人も検事の取り調べで供述を誘導されたと主張している。5人のうち4人の弁護人を務める久保豊年弁護士は「不起訴の約束を否定したことは到底首肯できない」などとコメントした。【中村清雅、井村陸】