水戸京成百貨店、トップダウンで不正? 「指示」否定する元社長

不正発表から1年。「水戸京成百貨店」による新型コロナウイルス対策の雇用調整助成金不正受給事件は、元社長の斎藤貢容疑者(66)=千葉県柏市=が詐欺容疑で逮捕される事態に発展した。茨城県内唯一の老舗百貨店は、トップダウンで不正に走ったのか――。【西夏生、長屋美乃里、川島一輝、鈴木敬子、木許はるみ、森永亨】
元総務部長「指示が社長から来た」
京成百貨店は2023年1月に3億円超の不正受給を発表した。悪用されたのが、20年4月に導入を決定した「特別休暇制度」。営業縮小に合わせて従業員を休ませ、休業補償は雇用調整助成金で補(ほてん)する仕組みで、コロナ禍での経営安定を図る目的だった。ところが逮捕容疑とされる1億3300万円の不正受給だけで、従業員約400人分について休業日数を水増ししたとされる。
親会社の京成電鉄などの調査は、当時の取締役総務部長が制度導入を提案し、不正も主導したと結論付けた。
一方、元総務部長は調査に斎藤元社長の指示を主張。その後の毎日新聞の取材にも「社長から話があって、僕が下(部下)に指示した。止められなかったというのは、罪は一緒」と関与を認めた上で、「『雇調金を取れ』という指示が社長から来て、(受給金額の)シミュレーションの紙を出した。(紙を見れば不正は)分かる。社長は自分で指示をしたいタイプなので、常に報告、相談しながらだった」と話していた。
水戸京成百貨店は18日、「元取締役社長の逮捕は極めて重大なことと受け止めている」とした上で、「お客様をはじめ、当社に関わる全ての皆様に度重なるご迷惑とご心配をお掛けしたことに改めておわびを申し上げたい」とコメントした。
京成百貨店と近くの市民会館、水戸芸術館で中心市街地の活性化を目指す水戸市の高橋靖市長は、報道陣に応じ、「大変遺憾。会社としてしっかり反省し、消費者、市民の信頼回復に努めていただきたい」と苦言を呈した。一方、引き続き3館で連携する考えも表明。「誰もなくなってほしいとは思っていないと思う。市民の期待に応えられる百貨店として、出直しをしていただきたい」と述べた。
県は18年から東京都内のアンテナショップ「イバラキセンス」の運営を京成百貨店に委託している。23年度末までの契約は継続する方針。一方、県会計管理課は今後の入札参加資格については「一般論としては業者の役員が逮捕された場合、指名停止をすることがある。今回も該当すると考えているが、近日中に判断する」とした。
元社長「言ったのは休業」 一問一答
水戸京成百貨店元社長の斎藤貢容疑者は2023年3月、毎日新聞の取材に応じ、「不正してお金をもらえなんて指示するはずが無い」と関与を否定していた。主な一問一答は次の通り。
――元総務部長は京成電鉄などの調査で、「斎藤元社長の指示だった」と言っている。
◆僕が言ったのは、「このままだと会社が持たないから休業しよう」と。その分を雇用調整助成金をもらえと。不正でもらえなんて全くあり得ない。
――特別休暇制度は斎藤元社長が主導したのか。
◆彼ら(総務部)から「特別休暇制度っていうのがあるから、これを使いましょう」と提案があった。不正してお金もらえなんて、泥棒だからね。そんなことを指示するはずが無くて、どこで僕から指示されたって思ったのかは不明。
――元総務部長に休みを取らせるノルマ意識があったのではないか。
◆僕は「計画通りやれているのか」とか、プレッシャーはかけなかった。彼からも「できてます」とか「できてない」とか全然報告ないから。赤字は(20年)4月、5月の時点で年度で見通しを立て、避けられないと(考えていた)。僕も「このまま続けば会社持たないよ」と言ったのは事実。だから休んで、雇調金である程度補充してということを言っただけ。
――取締役とはいえ、元総務部長が1人で判断したのかは疑問だ。
◆絶対不正はするなって注意した。1回目の請求の時に、たまたま他の会社が捕まったみたいなのを新聞で見て、記事のコピーを彼の机に置いた。(調査した)京成電鉄の人には「社長は見てなかったのか」と言われたけれど。請求を全て見なきゃならないですか、私の立場で。そんなの世の中あり得ないでしょう。(22年)11月14日に労働局(の査察)が入ったでしょ。僕と彼は15日にメールしていた。水戸の新市民会館の竣工(しゅんこう)式の記事が新聞に載ってたんだ。それで「百貨店頑張ってよ」と。彼からも「頑張ります」って。(不正を指示していたなら)14日に(査察が)入ってて、15日の返信で「頑張ります」はねえだろって。「社長、昨日、入りました」と知らせるとかさ。彼は自分1人見つかっちゃって、僕に罪をね、押しつけるってことで言ったとしか考えられない。

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