京都大が「吉田寮」(京都市左京区)の寮生らに明け渡しを求めた訴訟の判決で、京都地裁は、今も住んでいる14人については明け渡す必要がないと判断した。学生側が一部勝訴した判決に、法廷に集まった関係者からは歓喜の声が上がり、寮生らは「大学は話し合いを再開してほしい」と訴えた。
大学が学生を訴える異例の訴訟で、提訴から判決までは約5年を要した。判決が言い渡された大法廷の傍聴席には、京大生らも多く詰めかけた。
裁判長が読み上げる判決理由に聴き入り、被告となった寮生のうち14人の在寮が認められたことが分かると、寮生や傍聴席の学生らは「よっしゃ」「やった」と声を上げた。大学側の席は空席だった。
判決後に寮生らは市内で記者会見を開き、弁護人が判決内容を説明。寮生の松村主承(かずのり)さんは「この判決を機に、大学側が改めて吉田寮について考え直し、寮自治会と話し合いを再開してくれることを願っています」と話した。
寮生の高橋歩唯(あい)さんは「自分たちがやってきたことが司法の場で認められてうれしい」。判決では寮生3人については退去を命じられ、高橋さんは「(3人は)控訴審で一緒にやっていけたら」と語った。
入寮選考にも携わったことがある松村さんは「自分たちが住む権利だけを求めているのではない。困窮学生が大学に通う権利を、吉田寮を通じてつないでいきたい」と語った。【久保聡、山崎一輝】