エスカレーターで立ち止まること義務付けた名古屋市、歩く人にはAIが「条例違反です」

エスカレーターで立ち止まることを義務付ける条例を施行した名古屋市で、AI(人工知能)を使って安全な利用を促す実証実験が、中区の市営地下鉄伏見駅で行われている。先進技術を生かした啓発の効果を確かめる狙い。今月末までの効果を検証し、主要駅での本格導入を検討する。(桑田睦子)
昨年10月に施行された市条例では、市内の駅や商業施設などにある全てのエスカレーターを対象に、左右問わずに立ち止まることを義務付けている。名古屋では右側を空けて乗る習慣があるが、接触による転倒事故などを防ぐため、両側に立つ「2列乗り」を定着させることを目指している。
実験は、鶴舞線上りホームのエスカレーター1基にセンサーなどを設置し、1月末に本格的に始まった。市が事業者を募り、AIベンチャー「来栖川電算」(名古屋市中区)が、車の自動運転や医療現場で使われる技術を応用した装置を開発した。
装置はAIと高精度センサーで利用者の動きを検知し、歩く人がいると、警告音を発して「条例違反です。立ち止まってご利用ください」などと音声で呼びかけ、立ち止まると「ご協力ありがとうございます」と伝える。左側に立つ人が連なって乗り口が混雑すると、「片側が空いています。2列で立ち止まってご利用ください」と、右側も利用するように促す。
市が鉄道駅や商業施設で実施した実態調査によると、エスカレーターを歩いたり、走ったりした人の割合は、条例制定前(2022年4~5月)の21%から施行後(23年11~12月)は7%に減少。93%の人が立ち止まっていた一方で、左側に立つ人は7割を占めている。
実験について、市消費生活課の担当者は「音声を聞いて立ち止まる人もいて、一定の効果はある。左右両側に立ち止まって乗るよう、協力してもらいたい」としている。
本格導入は未定だが、市は今回の実証実験の期間で、より効果的な警告音や音声の内容などを探ってきた。同社の山口陽平取締役(45)は「歩く人を減らす効果があるとわかった。より効果的で導入しやすいよう改良したい」と話す。

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