自民「裏金を被災地に寄付」検討〝永田町的独善〟で国民の理解得られるか? 「バカにしている」荻原博子氏 「税務調査行うべき」の声

派閥の政治資金パーティー裏金事件で、岸田文雄首相(総裁)率いる自民党執行部が、所属議員85人の受け取ったキックバック(還流)相当額の寄付を検討していると共同通信が報じた。能登半島地震の支援に充てる案が浮上している。世論の「税務当局は裏金に課税すべきだ」という圧倒的意見を受けたものだが、寄付はごまかしに見える。国民の政治不信を払拭するのは容易ではない。
85人の内訳は、安倍派(清和政策研究会)と二階派(志帥会)の現職82人、選挙区支部長3人。安倍派の有力者「5人衆」や、二階派を率いた二階俊博元幹事長らが含まれる。
還流の裏金化は2018~22年の5年間で総額約5億7949万円に上る。不記載額は最多の二階氏が3526万円で、三ツ林裕巳氏の2954万円、萩生田光一氏の2728万円などが続く。
この案をどう見るか。
経済ジャーナリストの荻原博子氏は「完全に国民をバカにしている。事件の全容を解明し、税務当局が裏金を調査して適正に課税し、法制度を厳格化することが筋だ。自民党は証人喚問は嘘をつけないから政治倫理審査会を開いたが、何も明らかにならず、世論の激怒に焦って言い逃れに終始している」と厳しく断じる。
国民の怒りは世論調査に表れている。
共同通信の調査では、94・5%が「裏金を受け取った議員への税務調査を行うべきだ」と答えている。国民の常識では、「非課税の政治資金なら政治資金収支報告書に記載すべき」「裏金なら個人所得で課税対象」なのだ。
野党も国会で、「裏金が発覚した議員への納税指示」を訴えているが、岸田文雄首相は「個人で受領した例を確認できていない以上、納税を促す行為は今は考えていない」と煮え切らない態度だ。
自民党議員は「この期に及んで『寄付』という発想は永田町的独善だ。国民の怒りを買いかねない」と懸念する。
「すでに裏金は使用した」と報告した議員もいるが、執行部は全額分を寄付させることを想定している。高額負担を迫られる議員の反発も予想される。
前出の荻原氏は怒りをあらわにこう指摘した。
「国会は、被災地対応を後回しに政倫審を開いていた。どの口が言うのか。国民は高負担に耐え、インボイス制度で厳格に課税されている。国を代表する政治家にいい加減な対応が許されるわけがない。国会で全容を明らかにし、再発防止策を示さない限り、政治不信は増すばかりだ」

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする