石川県能登町の海沿いに設置された巨大なスルメイカのモニュメント「イカキング」は、能登半島地震で津波に遭ったが、ほぼ無傷で残った。併設する観光施設は今月中に営業を再開する予定で、関係者は「復興の支えに」と期待を寄せている。(木村誠)
イカキングは全長13メートル、幅9メートル、高さ4メートルの繊維強化プラスチック製。同町の能登小木港は「日本三大イカ釣り漁港」として知られており、特産のスルメイカをリアルに再現した。
2021年3月、町の観光施設「イカの駅つくモール」の敷地内に設置された当初は、「無駄遣い」だとの批判を受けた。建設費約2700万円のうち、2500万円が新型コロナウイルス対策として国から交付された地方創生臨時交付金だったからだ。
しかし、メディアに取り上げられたことなどから、観光客らが訪れ、記念撮影を楽しむように。「つくモール」駅長の林生一郎さん(45)は「施設にとっても地域にとっても、なくてはならない存在」と強調する。
元日、施設は休業日で、消防団員の林さんが深夜にたどり着くと、30センチほどの津波が来た跡があったが、イカキングは無事だった。1月20日、公式X(旧ツイッター)で「海には帰らず、いつもの場所に居ます。これからも奥能登を元気にするぞ」と報告すると、今月18日までに約4万7000件の「いいね」を集めた。
同町の小学6年生(12)は「みんなが楽しめる町のシンボル。復興に向けた特別な存在なのかなと思う」と話す。
施設は休業中だが、上下水道が復旧した2月末には、各地からの応援職員向けにトイレを開放した。壁にカレンダーの裏紙を貼り、「イカキングより」として能登への応援メッセージを求めたところ、「頑張って下さい。イカが食べたくなりました」(大阪府警)、「がんばっぺ能登!」(福島県警)などの書き込みでいっぱいになった。
県漁協小木支所によると、6月の本格的な漁期に向け、漁船の修繕などを進めているという。施設も仕入れ体制を整えて、月内の営業再開を目指す。林さんは「イカキングは津波に流されなかったたくましい存在。イカキングを見て元気を出してもらえれば」と話す。