またも宝塚を舞台に事件が起きた。3月7日、大阪府警は元タカラジェンヌでイベント会社代表の岡部由美(67)を、詐欺容疑で逮捕。
「岡部は2017年、群馬県の土地を所有していると偽り、その土地を担保に宝塚ファンでタニマチの70代女性から現金2000万円を受け取った。警察は余罪もあるとみて捜査を進めています」(社会部記者)
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在籍3年で退団 その後はジャズダンスの講師に
岡部が星組男役として歌劇団に入団したのは、1974年のこと。
「60期生で『宮つかさ』という芸名で活動。同期に元月組トップスターの剣(つるぎ)幸(みゆき)や元雪組トップ娘役の遥くららがいる。岡部さんは170センチ近い長身の、華のある男役だった印象があります」(ファン)
在籍3年で退団。その後ジャズダンスの講師となる。
「退団2年後に父親が大阪府吹田市内に一軒家を購入し由美も同居。87年に父親の資金援助を受け、自宅近くでダンススタジオをオープンした」(岡部の知人)
金銭感覚が緩く、知人から借りた開業資金を踏み倒していた
当時、周囲に「生徒を育てて、ショーを定期的に開催したい」と夢を語っていたという。だが、現実はあまくなかった。
「大阪城ホールで着物ファッションショーを開催するも不入りで赤字。さらに吹田にダンス教室が乱立し生徒が流出。経営不振により開設2年足らずでスタジオを閉鎖した。失意の彼女は4年ほど表舞台から姿を消しました」(前出・知人)
01年にイベント会社を設立し飲食店経営にも乗り出すも、07年に自己破産を申請。この時期にお金をめぐる問題を起こしていた。
「親の庇護を受けてきたからか、金銭感覚が緩く退団後も“夢見る少女”のまま。大阪の北新地や宝塚で飲み屋を潰してはまた別の場所で開業。しかも知人から借りた開業資金を踏み倒していた。この頃から彼女のお金絡みの悪評を多く聞くようになりました」(同前)
両親と暮らしていた自宅の登記簿によれば、06年に自宅を担保に知人の会社から600万円借りたとみられ、窮状ぶりが窺える。
セカンドキャリアに苦しむ男役OGたちを集めて舞台を演出
それでも、舞台制作の夢は捨てず、11年に再びイベント会社を起こす。この頃から本名の岡部由美ではなく『岡部優妙』と、名乗るようになったという。そして13年、夢を叶えた。
「宝塚OGによる舞台『月と狼と太陽』を手掛けたのです。翌年にはNHK大阪ホールで世界的デザイナーの桂由美のブライダルショーを主催し、総勢30人近くのOGが歌と踊りを披露。IT企業の社長がタニマチとして協賛していました」(宝塚関係者)
岡部が演出する舞台の特色は、元男役のOGが現役さながらに男役を演じることだ。
「近年、退団後も芸能活動を続けるOGが増える中、とりわけ男役出身で活躍できるのはほんの一握り。身長が高いから共演者の中で浮くし、発声法など宝塚流が抜けず『女に戻れない』人もいる。岡部さんのもとにセカンドキャリアに苦しむ男役OGたちが集まっていったのです」(同前)
だが、岡部は元タカラジェンヌの受け皿となる陰で「清く正しく美しく」とかけ離れた行状を繰り返した。
タカラジェンヌのタニマチが大阪府警に相談し、事件が発覚
16年頃、夜中にスーツケースを引きながら知人のもとを訪ねては「1000万円ちょうだい」と無心して回っていたという。大阪水都ロータリークラブ創立会長の梶田梓(あ)聞(もん)氏が証言する。
「古い付き合いで、公演のご知見をお借りしたことがあった。ある時、夜10時頃、自宅に突然お見えになってお金を貸して欲しいと。借りる理由を教えてくれなかったのでお断りさせていただきました」
前出の知人は「資金繰りが悪化していた」と言う。
「宝塚のような華やかな舞台を作るにはお金がかかる。会場代の負担も大きく儲かっていなかった。ミネラルウォーターの販売にも乗り出したが、わずか3年で撤退。私が知るだけで10人ほどからお金を借り、私も700万円返してもらっていない」(別の知人)
そして17年、岡部が頼ったのはタカラジェンヌのタニマチだった。これが今回の逮捕へとつながった。
「詐取した2000万円は会社の運転資金に充てたとみられる。いつまで経っても岡部から返済がないので被害者が大阪府警に相談し事件が発覚した」(前出・記者)
岡部が犯した数多の「余罪」。“夢見る少女”の末路はあまりに暗い。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年3月21日号)