自民党は4日、党紀委員会を開き、派閥の政治資金規正法違反事件に関係した安倍、二階両派の議員ら39人に対する処分を決定した。安倍派の座長を務めた塩谷立・元文部科学相と参院安倍派会長だった世耕弘成・前参院幹事長が「離党勧告」を受け、世耕氏は離党届を提出し、受理された。
岸田首相(党総裁)は処分によって事件に一定の区切りをつけたい考えで、首相官邸で記者団に対し、「今後は政治資金規正法の改正に全力を尽くす」と強調した。ただ、首相が自身への処分を見送ったことや、不正還流の経緯などの解明が進まなかったことに批判は根強く、信頼回復につながるかどうかは不透明だ。
今回の処分は、2005年に郵政民営化関連法案で採決に造反した議員ら59人に対する事例に次いで過去2番目の規模だ。首相は「長年の慣行を是正することなく、結果的に放置してきた幹部の責任を重くみる内容だ」と説明。「国民から多くの疑念を招き、深刻な政治不信を引き起こす結果となった」と陳謝した。
処分の対象者は、派閥の政治資金パーティー収入の還流分について、政治資金収支報告書への不記載が確認された議員ら85人のうち、18年~22年の5年間で500万円以上の不記載があった衆参議員ら。
塩谷、世耕両氏は22年の派閥幹部会合で安倍晋三・元首相から不正還流の取りやめを直接指示されたが、指導的立場にあったのに対応を取らなかったとして、党規律規約で2番目に重い離党勧告を科した。塩谷氏は離党について態度を保留しているが、従わなければ除名処分となる。
処分は派閥での役職や不記載額などに応じて4段階とした。離党勧告のほか、重い順に党員資格停止が3人、党の役職停止17人、戒告17人だった。
党員資格停止となったのは、いずれも安倍派の下村博文・元文科相と西村康稔・前経済産業相、高木毅・前国会対策委員長の3氏。下村、西村両氏は、塩谷、世耕両氏とともに22年の会合に出席していた責任が大きいとして、停止期間を1年間とした。高木氏は実務を取り仕切る事務総長を直近で務めていたが、この会合に参加しておらず、期間は6か月間にとどめた。
安倍派中枢の「5人衆」だった松野博一・前官房長官と萩生田光一・前政調会長は党の役職停止1年間とした。二階派の事務総長だった武田良太・元総務相や、不記載が1000万円以上だった議員も党の役職停止とし、武田氏ら派閥中枢にいた議員や不記載が2000万円以上の議員は1年間、他は6か月間と期間に差をつけた。