新型コロナウイルス感染症の5類移行から1年となるのに合わせ、日本医師会の釜萢(かまやち)敏常任理事に、移行を巡る政府判断の適否や今後のコロナ対応の在り方などを聞いた。
◇
1年前、5類に移行した政府の判断は適切だった。当時は、その後の感染の行方がどうなるか、不確かな面はあったが、この1年間の感染の広がりは、専門家らが想定していた範囲内で動いた。 ただ、コロナは思ったよりも厄介で、実にしたたかなウイルスだ。感染者数がもっと下がってくれるのが望ましいが、今後も感染の波が一定程度、続く可能性は高い。
それでも、これまでのウイルス株の動向を踏まえれば、今後大きくウイルス株が変異し、私たちの脅威となる可能性は小さいと予想する。
コロナ禍で、都道府県などは感染対応の経験を積んだ。当初はかなり苦慮したが、地方の衛生研究所などとどう連携し、ウイルスと向き合うべきか、それなりに分かるようになってきた。仮にある時期から感染者が一気に増えたとしても、迅速に対応できる。
コロナに万一感染しても、少なくとも65歳までは重症化しにくいことが分かってきたが、現状でも、高齢者や基礎疾患がある人が感染すれば重症化する可能性がある。そうした人たちに感染させない配慮は、引き続き必要だろう。
コロナ感染をゼロにするための妙案はなく、一定程度の感染防護策を取ることは今後も必要だと考える。手洗いの励行はもちろん、体調が優れない時はマスクを着用するといった基本を忠実に守ることが肝心だ。
次なる感染症危機を見据え、国も自治体も医療界も、平時からの備えを充実させる。自治体レベルで感染症予防計画が改定されるといった動きも出てきた。病床確保数など、コロナ禍での実績を基に数値目標も設定された。コロナ禍の経験を踏まえ、対応はかなり改善されるだろう。(聞き手 村上智博)