岸田文雄首相(自民党総裁)が掲げる「憲法改正」が怪しくなってきた。これまで、「(9月までの)総裁任期中の実現」を強調してきたが、10日の参院決算委員会では「最大限の努力をしていく」などと一歩後退した答弁をしたのだ。同日夜公表のNHK世論調査で、岸田内閣の支持率は発足後最低まで落ち込んだ。憲法改正断念となれば、保守層の「岸田離れ」は確実となりそうだ。
「時間的な制約があることは事実だが、一歩でも議論を前に進めるべく、党として『最大限の努力』をしていく方針はまったく変わりはない」
岸田首相は決算委員会で、日本維新の会の清水貴之氏から、総裁任期満了までの憲法改正に現実味があるのかを問われ、こう答えた。憲法改正は自身の公約だったはずが「努力」目標となり、主語も「党として」になっていた。
ベテラン議員は「保守層は『岸田首相は憲法改正を必ずやると公約した』という認識だ。どのような理由であれ、約束が反故(ほご)にされれば許さないだろう。今後、猛烈な反発が予想される」と険しい表情で語る。
岸田首相は繰り返し、総裁任期中の憲法改正を強調してきた。LGBT法の拙速な法制化などで、自民党に反発を強めた「岩盤保守層」をつなぎとめる狙いも指摘されていた。
自民党派閥裏金事件のあおりや、一部野党の強硬な反対などで早期の改憲発議は困難な様相だったが、「議論を主導する岸田首相自身の熱意が感じられなかった」(保守系議員)との声もある。
こうしたなか、NHKの世論調査(10日公表)で、岸田内閣の支持率は先月の調査から3ポイント下がって21%となり、発足以来最低となった。自民党の政党支持率も25・5%で、2012年の政権復帰後、最低となった。
中堅議員は「いよいよ、レームダック(死に体)化が進んでいる。自民党としても次の総選挙は『赤信号』に近い」と肩を落とした。