クマに扮した警察署員を監視、猟友会員に「あのクマを狙って」と発砲命令…駆除判断の過程を訓練で確認

山梨県都留市で今月上旬、住宅地近くでクマが出たとの想定で駆除訓練が行われた。警察や自治体、猟友会など関係12機関から約40人が参加し、いざという時の対処方法を確認した。
大月署管内では今年度、クマの目撃情報が昨年度を上回るペースで急増しており、同署は危機感を強めて住民に注意を促している。同署によると、管内のクマの目撃情報は15件(7月5日現在)で、前年同期から9件増えた。住宅地付近での目撃も多いという。昨年度は27件で、昨年10月には大月市で農作業中の男性がクマに襲われ、手足に軽傷を負った。
また、県自然共生推進課によると、県内では今年度、ツキノワグマの目撃情報が148件、159頭(7月22日現在)に上り、前年同期の65件、75頭から件数、頭数とも2倍以上に増加した。18日には、身延町の登山道で静岡県の男性(30)が襲われる被害もあった。
同課によると、例年は繁殖期に入る6~7月と、飽食期の10~11月に活動が活発になり、目撃情報が増える傾向にある。同一個体かどうかは不明だが、住宅地周辺で目撃される例も頻繁にあるという。
鳥獣保護法では、住宅地近くでの猟銃の使用を禁じているが、駆除しか手段がない場合は警察官職務執行法(警職法)に基づき、警察官の命令で発砲できる。
そこで、訓練は「人家近くで大きなクマが目撃された」との想定で実施。目撃情報を受けて鳥獣駆除の専門家や地元猟友会、県や都留市の担当者が集合し、〈1〉花火の音による追い払い〈2〉麻酔銃の使用〈3〉仕掛けわなの設置、などを検討したうえで、駆除するしか住民の安全を守る手段がないと判断する過程を確認した。
駆除する際は署員らが周辺住民の安全を確認し、クマに 扮 した署員の動静を監視しながら「あのクマを狙ってください」と猟友会員に発砲命令を出した。
大月署の平山幸比佐・生活安全課長は「住民の安全を守るには関係機関がそれぞれの役割を認識し、緊密に連携することが不可欠」と訓練の意義を強調した。

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