警察庁は、日本人向けに運営されている海外のオンラインカジノサイトについて、初の実態調査に乗り出す。若者の間に急速に広がり、借金苦で特殊詐欺などの「闇バイト」に加担するケースもみられることから、実態把握の必要性が指摘されていた。調査結果を関係省庁と共有し、違法サイトへのアクセスの規制検討や依存症対策などにつなげたい考えだ。
国内では競馬などの公営ギャンブル以外の賭博は禁じられており、海外のサイトに国内から接続して賭ければ違法になる。だが、「海外で合法的に運営されており、違法性はない」といった誤解が広まっている。
デジタル分析会社「シミラーウェブジャパン」(東京)の調査では、オンラインカジノへの日本からのアクセス数は2018年12月には月間約70万回だったが、19年から急増し、21年9月には約8300万回に上った。
カジノ問題に詳しい静岡大の鳥畑与一名誉教授(金融論)によると、オンラインカジノは自宅などから24時間利用が可能で、スロットマシンやルーレットなどのほか、プロ野球やサッカー・Jリーグなどを対象とした日本語対応のスポーツ賭博サイトもある。日本向けの賭博の売り上げは急激に伸びているという。
警察庁によると、オンラインカジノによる賭博事件での摘発者は昨年、107人に上った。このうちスマートフォンなどを使った「無店舗型」は32人で、22年の1人から一気に増えた。ただ、こうした個人の利用は発見が難しく、摘発に至るのは氷山の一角とされる。
このため、警察庁は日本向けのオンラインカジノの運営会社やその所在地、賭け金の入金や出金方法のほか、日本からのアクセス数などを調査する。国内の10歳代~70歳代の7000人以上を対象にしたアンケートも行い、利用状況を年度内にまとめる。
オンラインカジノを巡っては、大阪府警に6月に組織犯罪処罰法違反容疑などで逮捕された会社代表の男らが、カジノサイトへの賭け金を不正開設した口座に移して資金洗浄した疑いがあることが判明している。
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」(東京)によると、同会への相談に占めるオンラインカジノの割合は19年の4・3%から、23年は20・3%になった。のめり込んだ20~30歳代の若者が多額の借金を抱え、特殊詐欺の被害金の「受け子」や口座売買などの闇バイトに手を染めるケースも目立つという。
欧州などでは違法カジノサイトへの接続を止める「ブロッキング」などの対策に乗り出す国もあり、警察庁の担当者は、「基礎的なデータを集めて実態を早期に把握し、対策を検討していく」としている。