維新の本拠地・大阪で逆風、「『あの知事』推す政党は応援できない」の声も

幹部「慣れや緩みで必死さが失われた」

25日に投開票された大阪府箕面市長選で、地域政党・大阪維新の会は公認の現職が初めて敗れ、本拠地・大阪での逆風が浮き彫りになった。岸田首相の後任を決める自民党総裁選後、早期の衆院解散・総選挙が予想される中、維新内に動揺が広がっている。(長沢勇貴、山本貴広)
「こんなにぼろ負けするなんて。初心に戻って一からやり直すしかない」。維新府議はショックを隠さない。維新現職の上島一彦氏(66)は、新人の前自民府議、原田亮氏(38)にダブルスコア近い票差で敗北した。維新公認の現職首長の落選は、2010年の結党以来初めてだ。
吉村洋文代表(大阪府知事)は26日、X(旧ツイッター)で「 真摯 に受け止め、さらに前に進めるよう頑張ります」と書き込んだ。
維新は、会場建設費が膨らんだ25年大阪・関西万博への批判などから、本拠地の大阪で苦戦が目立っていた。4月の大東市長選では公認の新人が敗れ、6月の河内長野市長選では不戦敗に追い込まれた。
そんな中で迎えた箕面市長選。有権者の反応は厳しかった。
「あの知事を推す政党は応援できない」。ある維新府議は、支持者からそう言われたと明かす。
「あの知事」とは、パワハラ疑惑などで内部告発された兵庫県の斎藤元彦知事だ。国政政党の日本維新の会は21年の兵庫県知事選で、斎藤氏を推薦。自民も推薦したが、斎藤氏に事実上の辞任を求めるなど距離を置く。一方、維新は真相究明を待つべきだとの考えで、SNSでは「維新は斎藤氏を擁護している」などの書き込みが相次ぐ。
吉村氏が箕面市長選の告示日に応援演説をした際には、告発した職員が亡くなったことは維新の責任だと批判するヤジも飛んだ。
維新関係者によると、もう一つ、支持層の反発が強かったのが、日本維新が6月に成立した改正政治資金規正法について、衆院では賛成に回ったことだった。選挙期間中の集会では、改革に後ろ向きな自民に同調したとして「自民と同じじゃないか」と公然と批判が上がったという。
4年前の市長選で上島氏に投票した会社員男性(43)は今回、原田氏に投票した。「今の維新はかつての改革の熱意が感じられず、既成政党化している」と考えたからだ。上島氏が6月、万博に批判的な質問をした共産党市議に「万博行くなよ、出入り禁止や」とヤジを飛ばし、撤回に追い込まれたことについても「 傲慢 な印象だ」と話した。
9月27日投開票の自民総裁選後、新総裁は早期の衆院解散・総選挙に打って出るとの見方が強い。維新幹部は「慣れや緩みからか、維新から必死さが失われている。衆院選の候補者を入れ替えるぐらいのことをやった方がいいかもしれない。斎藤知事の問題にも収拾をつけないと衆院選は厳しい」と危機感をあらわにした。

自民・公明「衆院選へ弾み」

勝利した原田氏を支援した自民党や公明党は「衆院選に向け弾みになる」と沸き立った。
自民は、箕面市長選と同じ25日投開票で市議選もあり、府内の地方議員らが応援に入った。自民を離党して「完全無所属」を打ち出す原田氏に配慮し、街頭での応援は控えたが、個別に支持を呼びかけた。
自民は、21年の衆院選で公認候補を立てた府内15小選挙区で維新に全敗。党本部主導で昨年5月に大阪刷新本部を設置し、組織の立て直しを図ってきた。原田氏が維新新人に惜敗した昨春の府議選箕面市・豊能郡選挙区では、維新支持者からビラの受け取りを拒まれたが、今回は「維新じゃあかんねん」と声をかけられたこともあったという。
「維新が出れば勝つという流れがこの選挙で変わる」と原田氏。自民府連幹部は「衆院選でも、善戦できる選挙区も出てくるだろう」と手応えを語る。
次期衆院選の大阪・兵庫6小選挙区で、維新と初めて直接対決する公明。箕面市長選では「自主投票」を決めたが、選挙戦終盤には、公明側の希望で、石川博崇府本部代表(参院議員)が原田氏と一緒に街頭演説。支持母体・創価学会の幹部は「ここで維新を潰せば潮目が変わると考え、全力を尽くした」と話した。

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