知床・観光船沈没事故 船長を容疑者死亡のまま書類送検へ 「ハッチの不具合」認識も…関係者の証言は

運航会社の社長が逮捕された知床沖の観光船沈没事故で新たな情報です。海上保安庁が死亡した船長を容疑者死亡のまま書類送検する方針であることが新たにわかりました。
発生から2年5カ月。運航会社の社長・桂田精一容疑者の逮捕という急展開を迎えた知床沖の観光船沈没事故。
■第1管区海上保安本部・藤田望警備救難部長:
「被疑者・豊田徳幸(船長)にかかる業務上過失往来危険、業務上過失致死の疑いについても鋭意、捜査を進めている。」
海上保安庁は、事故で死亡したKAZU1の船長・豊田徳幸さんについても、業務上過失致死などの疑いで容疑者死亡のまま書類送検する方針であることが20日、新たにわかりました。
■豊田船長アナウンス:
「この先5分ぐらいで(知床半島)先端に到着いたしますのでもうしばらくお待ちください。」
知床の海での乗船経験はわずか1年ほどだった豊田船長。元同業者は経験が浅いとは言え、その責任は重いと強調します。
■豊田船長を知る元同業者:
「死亡事故とか行方不明になった場合は、全部船長の責任だから」
Q船長の責任とはどういうものだと思いますか?
「安全にやらなければいけないのを怠った」
なぜ船は沈んだのか。海上保安庁は事故の原因について、前方の「ハッチ」から船内に水が流れ込んだことにより沈没に至ったとしています。実は、そのハッチの不具合を豊田船長も事故直前に認識していた可能性があると、観光船の関係者は証言します。
■知床の観光船関係者:
「(KAZU1の)ハッチからえい航に使うロープを出したんだけど、豊田くんが(ハッチのふたを)閉めようと思ったんだけど、閉めにくそうにして結局閉まらなかったんだ」この写真は事故2日前の救命訓練で撮影されたものです。
このときもハッチのふたが完全に閉まらない状態で訓練を続行し、船を出航させていたといいます。さらにこの関係者は事故があったおととし4月23日は悪天候が予想されていたことから出航をやめるよう事前に何度もアドバイスしていました。
■知床の観光船関係者:
「訓練があった21日も言ったけどね俺はね、『23日はおまえダメだぞ』と。22日の航路確認の時も『やっぱりダメだな23日は』と話して当日も最後のトドメと思って言った『きょうはダメだぞ』って。
『あー、はい』ってどうしてダメなのかなという感じの返事だった。」
結局、船を出し、乗客とともに命を落とした豊田船長。
KAZU1の運航管理者だった桂田精一容疑者も、出航を止めることはありませんでした。
釧路地裁は20日、桂田容疑者の勾留を決定しました。発生から2年5カ月。これまで任意聴取に応じてきた桂田容疑者をなぜ逮捕、勾留したのか。刑事事件に詳しい弁護士は。
■山本賢太郎弁護士:
「会社の関係者等に働きかけて供述を変えさせるといったところが可能性としてあるということで勾留されたんじゃないかなと予想します。
ただしこの時期に及んで証拠隠滅の口裏合わせをするようなことが現実的にあり得るのかというところは疑問を持たないわけではありません。」
検察は最大20日間の取り調べを行い桂田容疑者を起訴するかどうか判断します。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする