石破茂首相(自民党総裁)が「政権居座り」を画策している。27日投開票の衆院選で、自民、公明の与党は計215議席にとどまり、自ら「勝敗ライン」に掲げた「自民、公明両党で過半数(233議席)」を割り込む大惨敗を喫したのに、一部野党と連携などで権力死守を模索しているのだ。何と森山裕幹事長まで続投の意向という。今回の敗因は、派閥裏金事件を選挙の争点に設定したことや、解散時期をめぐる石破首相の大ウソ、安倍晋三元首相を「国賊」と罵倒した村上誠一郎総務相らの重用、「非公認」候補側へ2000万円支給など、石破執行部の「戦略ミス」が重なったことが大きい。こんな選挙指揮しかできない政権で、目の前に迫る「有事」に対応できるのか。自民党内では憤怒の声が渦巻き、保守派を代表する高市早苗前経済安保相への交代論が浮上している。
森山幹事長まで続投の意向
「『政治とカネ』で非常に厳しいご審判を受けたが、これから先、どう政策実現するのか。努力を最大限していかなければならない」
石破首相は議席激減が現実化した27日夜、民放番組で不機嫌な表情でこう語り、続投意欲をにじませた。
あきれるしかない。選挙結果は、自ら設定した「勝敗ライン」を大きく下回り、選挙戦では「ルールを守る」と断言していた。ぶざまな選挙指揮で、連立与党を組む公明党の石井啓一代表まで落選させたのにである。
党内に、石破執行部の責任を問う声が渦巻いている。小泉進次郎選対委員長は「私の力不足を申し訳なく思う」と辞任する意向のようだが、石破首相だけでなく、森山幹事長まで続投の意向を示しているのだ。
ベテラン議員は「石破首相は『政治とカネの問題に議論が集中して理解を得られなかった』と人ごとだが、裏金問題を再燃させたのは首相本人だ。これでは壊し屋だ」と憤る。
保守系議員も「外交・安全保障や、経済対策をはじめとする内政問題など、わが国が直面する課題を議論できない選挙戦にした。石破執行部は野党に多くの議席を譲り渡した」と断じる。
そもそも、裏金事件については、東京地検特捜部が今年1月に捜査を終結させ、自民党は4月に党処分を終えている。
ところが、石破首相は、9月の総裁選で〝一事不再理の原則〟を無視して再提起した。総裁に就くと、処分を受けた議員の公認を容認する姿勢だったが、解散直前に旧安倍派議員らの「非公認」や「重複立候補の剥奪」を宣言した。
ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「石破首相には、裏金問題を選挙の争点化した判断が問われる。一貫して政権運営のガバナンスを欠いた岸田文雄前首相の責任も極めて重い。政権選択選挙で、国民は『自公与党にノー』と突き付けた。石破首相の責任論は不可避だ」と強調する。