「推し」にはまり「パパ活」の末に妊娠 産んだ赤ちゃんをごみ箱に捨てた女の生活

出産直後の男児を袋に入れて捨てたとして、殺人未遂罪に問われた女(23)の裁判員裁判で、東京地裁(宮田祥次裁判長)が懲役3年、保護観察付き執行猶予5年の判決を言い渡した。男児は奇跡的に命を取り留めたが、低体温症や肺炎を負った。公判で女の口から明かされたのは、地下アイドルに貢ぐため、上京して友人方で暮らしながら「パパ活」を繰り返す異様な生活だった。
出産翌日には地下アイドルのライブに
「どうしたらいいか分からなかった」。被告は男児が生まれた「その時」のことを、被告人質問でこう振り返った。
異変を最初に感じたのは令和6年4月ごろ。次第におなかが膨らみ始め、友人からも体形を指摘されるようになった。「ばれるとみんな離れていく」という不安から、病院に行ったり周囲に相談したりすることもなく過ごした。
6月20日未明、当時友人らと同居していた東京都練馬区のアパートで、陣痛が始まった。浴槽にお湯を張り、痛みを和らげようと試みる。気づかれないように声を出すことはなかった。
痛みに途中で意識を失い、お湯は血で染まった。それでも力を振り絞り、男の赤ちゃんを出産。そこにあったカミソリでへその緒を切り、シャワーで血を流した。
動揺し、産声が確認できずに「死んでいるかも」と思った被告は午前6時半ごろ、男児をタオルとともに袋に入れ、隣のアパートの外に設置されたふた付きのごみ箱にそっと置いた。
男児は約12時間後に住民が泣き声に気づいて救急搬送され、一命を取り留めた。出産当日は痛みで身動きが取れなかった被告は、周囲にばれないようにするため、翌日には「推し」のライブに出かけたという。
日帰りで上京、月50万円使うことも
人と話すことが苦手だった被告は4年3月に専門学校を卒業後、高校時代から続けていた飲食店の調理場でのアルバイトを続けながら、兵庫県の実家で暮らしていた。好きなアイドルはいたが、大金を費やすことはなかったという。
だが、あるときSNSで男性が弾き語りをしている動画を見つけ、心を打たれた。男性はその後、地下アイドルとしてデビュー。ライブや、一緒に写真撮影できる「チェキ会」は東京でやることがほとんどで、被告は夜行バスなどを使って月に4、5回ほど日帰りで通い、月に50万円ほど使うこともあった。
資金を捻出するため、友人の紹介で5年6月ごろから実家に住みながら静岡県の派遣型風俗店で働き始めた。「抵抗があったが、(今までの)バイトより稼げた」。客に求められれば、避妊具を着けない方が稼げることにも気付いた。
推し活で仲良くなった男性から東京で一緒に住むことを提案され、9月ごろに上京。後に仲間の女性も加わった。これを機にデリヘルを辞めて「パパ活」に。ここでも避妊具を着けない代わりに高額の報酬を得ることを選び、不特定多数の男性と関係を結んだ。
その末の妊娠だが、父親は分からないままだ。
「これからは赤ちゃんを1番に」
被告人質問で男児をどうするつもりか問われた被告は「自分と一緒にいることが最適かわからない」とした上で「できれば一緒に暮らしたい」と述べた。
検察側は論告で推し活のために妊娠し、男児を捨てるに至ったことは「あまりに軽率、安易であり、生命を軽視する態度が著しい」と非難。弁護側は、被告には優先順位を適切につけられない特性があり、犯行当時はパニック状態だったなどとして、酌量を求めた。
宮田裁判長は判決で、被告は男児をタオルとともに袋に入れるなど、「殺意は強いものではなかった」と認定。被告の特性や、深く反省していることを認めて執行猶予付きの判決とした。
法廷では「赤ちゃんのことを思うと本当に申し訳ない」と、時折涙を見せながら一貫して反省の態度を示し続けた被告。最終意見陳述では、男児との同居がかなわなかったとしても、「ちゃんと罪を償って、これからは赤ちゃんの幸せを1番に考えて行動する」と決意を語った。
(長谷川あかり)

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