2021年、熱海市で起きた土石流災害の後、被災地への立ち入りを禁止していた「警戒区域」が、ようやく解除されました。すぐに自宅に戻れる被災者は少なく、課題は山積みになっています。
ようやく警戒区域が解除された、9月1日朝の被災地の様子をご覧ください。
(熱海市 斉藤市長)
「本日、午前9時、警戒区域を解除いたします」
土石流災害から2年2か月、ようやく警戒区域が解除された被災地。避難生活を送っていた住民らが、自宅へと戻っていきます。
28人が亡くなった土石流災害をめぐっては、起点部分の盛り土に不安定な土砂が残っていた為、被災地は「警戒区域」として、原則立ち入り禁止となっていました。
2022年10月に始まった、県の行政代執行による土砂の撤去工事が、先週、完了したことなどから、熱海市は9月1日「警戒区域」を解除しました。現場を訪れた熱海市の斉藤市長は…
(熱海市 斉藤市長)
「復旧復興の一里塚だと考えている」「1世帯でも多くの人が、この地へ帰還できるよう努めていきたい」
熱海市によりますと、8月末時点で100世帯180人の方が避難生活を続けていますが、9月中に家に戻る意向を示しているのは、7世帯13人にとどまっている状況です。
解除を受けて早速、荷物を家に運び入れていた81歳の男性。この日に向けて台所をリフォーム。すでに水道や電気などのライフラインも復旧しています。
(被災者)
「長い避難生活、ようやく今日から家に戻れるようになり、ほっとしている」
男性は引っ越しが終わり次第、9月3日から伊豆山で生活を始める予定だということです。
(永見佳織アナウンサー)
「9月1日、きょう帰還を希望した小松さん、いま自宅の前に車が到着しました」
同じく、自宅に戻る決意をした91歳の男性。警戒区域の解除に、安堵の表情を見せました。
(被災者)
「きょう警戒区域が解除されて帰還できる」「2年2か月、精神的にも不安定で、避難生活も本当に大変でした」「やっと家に帰れるんだと安堵した気持ち」
しかし、素直に喜べないことも…
(被災者)
「市役所は8月31日までにライフラインはすべて復旧させると、警戒区域が解除されれば、すぐに生活ができるという案内だった」
小松さんの自宅は、まだ電気が復旧していません。小松さんはすぐに生活を始める予定でしたが、電気の復旧まで1カ月かかるということで、急遽引っ越しのスケジュールを変更し、9月末に伊豆山の自宅に戻る予定です。
自宅へ戻ることができた人がいる一方、帰りたくても帰ることができない人もいます。きょうの日を複雑な思いで迎えた被災者を取材しました。
警戒区域だった場所に自宅がある女性。生まれてから73年間、ずっと伊豆山で暮らしてきました。
月命日は欠かさず、伊豆山で黙とうを捧げています。解除まで1か月をきった8月、話を聞くと・・・
(被災者)
「ひずみがきていたので直してもらおうと、大工さんに来てもらったら、下の外壁がしっかりしていないので、上を直してもひずみがくるから駄目」「帰れないです」
土石流によって擁壁が崩れ、基礎から工事をしないと、住むのは危険だと言われました。しかし、自宅に面した道路も崩れていて、車両が入ることができず、道路が整備されるまで工事をすることはできません。
この日は娘たちとともに斉藤市長と面会しました。
(被災者)
「要望書を出したので、家や道のことなど、疑問点を市長と話したい」
面会は約2時間。市長からは、今後の道路整備など復興へのプランなどが示されましたが、実際、用地買収は進んでいないといいます。
一緒にいた女性の娘は・・・
(被災者の娘)
「2年かけてこの程度なんだ、今までの2年間 何だったんだ、2年かけてやっと個別に被害者の話を聞けるようになっただけ」「やっと、これから、用地買収していきますみたいな、私たちは一体いつになったら家に戻れるのか、本当に戻れるのか、不安しかない」
女性は現在、熱海市の隣、神奈川県湯河原町での生活を余儀なくされています。家賃の援助は延長されることになりましたが、市の対応には不満が募るばかりです。
(被災者)
「市の対応が部署によって一つにまとまっていない、こちらに行けばこう言われる、こちらの部署に行けばこう言われる、話が一つにまとまっていない、聞くとどうしていいのか分からなくなる」
伊豆山の自宅とは比較にもならない狭い部屋での生活は、しばらく続きそうです。
(被災者)
「(湯河原町は)坂はないし、交通はすごく便利、お店もけっこうある、伊豆山は、お店もないし、坂ばかりでとても不便だったけれども、でも、やっぱり帰りたいです。思い出…そして緑、夏 いま帰るとセミが鳴いている、ここセミの声は聞こえない、夏の風物詩が何もない、それで帰りたいと思います」
警戒区域が解除された9月1日、小松さんに自宅を案内してもらいました。2年以上、誰も住んでいない家、所々で建物の傷みが目立ってきています。
「すぐ本を取れるように置いていたが、開けてみたら」
「天井が外れてる、めくれてしまっている」
「こんなところまで」「(天井が)波打ってますよね」「今まではなんともなかった」
一日も早く修復したいところですが、先行きは見えないままです。