[社説]辺野古 県敗訴確定 自治踏みにじる判決だ

名護市辺野古の新基地建設に伴う設計変更申請を巡る裁判で、最高裁第1小法廷は、県の上告を棄却した。
県の敗訴が確定したことで、民意を背景に反対の姿勢を貫いてきた玉城デニー知事は、重大な決断を迫られることになった。
軟弱地盤改良工事のための設計変更申請を不承認とした県に対し、国土交通相は不承認を取り消す「裁決」と、承認するよう求める「是正の指示」を行った。
「裁決」は無効だとする訴訟は上告不受理が決定しており、今回の辺野古訴訟は「是正の指示」を違法な国の関与だとして県が取り消しを求めていたものである。
最高裁の判決は、県がこれまでさまざまな場で主張し、司法の場でも問題にしてきた辺野古埋め立てを巡る重要な論点がまったくと言っていいほど取り上げられていない。
取り上げているのは、本来国の業務である法定受託事務の審査請求に関する法解釈などの問題である。
判決は、県の不承認を取り消す裁決が出された場合、県知事は「裁決の趣旨に従った処分をする義務を負う」と指摘する。裁決後も同じ理由で申請を認めないと「紛争の解決が困難になる」というのが最高裁の言い分だ。
国の関与について地方自治法は「必要最小限度のものとし、普通地方公共団体の自主性、自立性に配慮しなければならない」と規定する。
最高裁判決は、反対する地元の民意を切り捨て、地方自治の視点を著しく欠いた内容だ。
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最高裁は、県側が上告受理を申し立てた8項目のうち4項目を受理した。
軟弱地盤工事を進める際の災害防止への配慮、安全性の確保、環境保全措置、埋め立てが国土利用上適正かつ合理的かどうか、などである。
いずれも辺野古問題の核心を成す重要な論点だ。
沖縄基地の歴史的成り立ちと、基地の過重負担の現実、中北部への基地の再編統合がもたらす新たな負担の発生。 司法がこうした現実に向き合い、問題解決の糸口を見いだすことを多くの県民は求めていたが、司法は国の主張の追認機関のようになってしまった。
敗訴を受けて玉城知事はどのような判断を示すか。
想定されるのは(1)県は判断を示さず国が代執行手続きを開始(2)新たな理由で県が不承認、再撤回(3)知事が承認し着工へ-という三つのパターンである。
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県の対応を巡って今後、賛成反対さまざまな意見が入り乱れ、情報戦のような様相を呈することになるだろう。
玉城知事に求められるのは、これまで訴えてきたことをもう一度整理し直し、訴訟の問題点を明らかにし、基本姿勢を示すことだ。
裁判に敗れたからといって将来展望も示さないまま設計変更申請を承認すれば、辺野古反対の民意に背くことになり、知事の存在根拠が失われる。
今、何をすべきか。状況打開に向けた熟慮と英断を注視したい。

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