木原稔防衛相(54)の大臣秘書官に就任した篠田了氏が、防衛コンサル企業の代表取締役を務めていたことが、「 週刊文春 」の取材でわかった。篠田氏は、木原氏が防衛政務官や首相補佐官(国家安全保障に関する重要政策担当)時代にも同社の代表取締役を務めており、利益相反に繋がる疑いがある。篠田氏は取材に対し、「大臣秘書官就任にあたり、代表取締役を辞任した」旨を認めた。
木原氏は日本航空のパイロット、総合職を経て、2005年9月の郵政選挙で熊本1区から出馬し、比例復活で初当選を果たした。茂木派の所属で、現在5期目だ。
「その存在が注目を集めたのは、2015年6月のことです。沖縄全戦没者追悼式での安倍晋三首相(当時)への野次について『動員されていた』などと述べ、物議を醸しました。自身が代表の勉強会でも、講師に招いた作家・百田尚樹氏が『沖縄の2紙を潰さないといけない』と発言し、木原氏は党青年局長を更迭されたのです。こうした言動から、党内きってのタカ派と見られてきました」(政治部記者)
防衛機密を知り得る立場にありながら、防衛コンサル企業を経営
今回、木原氏の防衛相就任に伴って、大臣秘書官に起用されたのが、篠田氏だ。木原氏が2012年12月の衆院選で国政に返り咲いて以降、篠田氏は政策秘書として事務所を取り仕切ってきた。
一方で、篠田氏は“サイドビジネス”も手掛けている。2008年1月に設立された「株式会社エア・ビジネス・パートナーズ」の代表取締役を務めてきたのだ。同社のホームページには〈強み〉として〈国防戦略への理解〉が掲げられ、業務として〈防衛戦略研究と政策および事業の提案〉などが明記されている。取締役には、元航空自衛隊の幹部も名を連ねていた。航空ビジネスも手掛けており、2017年度には台湾のLCC「タイガーエア台湾」の函館空港便の定期就航を巡って、函館市が567万円の補助金を支出している。
この間、木原氏は防衛政務官(2013年9月~2014年9月)や首相補佐官(2019年9月~2021年10月)を歴任してきた。つまり、篠田氏は政策秘書として防衛機密を知り得る立場にありながら、防衛コンサル企業を経営していたことになる。篠田氏が衆院事務局に提出している兼業届によれば、自身の報酬はゼロだが、透明性に欠ける構図であるのは否めない。
篠田氏本人に電話で話を聞いた。
「政策秘書は関係ありません」
――エア・ビジネス・パートナーズの代表取締役だった?
「もう辞めています。兼任がまずいからですよ」
――木原氏が政務官や補佐官時代も代表取締役だが。
「木原が首相補佐官だろうがそうでなかろうが、政策秘書は関係ありません」
事務所は「コンサルティングとしての活動は停止状態」
木原事務所に事実関係の確認を求めたところ、主に以下のような回答があった。
――篠田氏はエア・ビジネス・パートナーズの代表取締役を辞任?
「9月12日付で辞任しています。防衛大臣秘書官の業務に専念するためです」
――政務官及び補佐官時代にも代表取締役だったが。
「株式会社エア・ビジネス・パートナーズは、宇宙航空防衛分野のコンサルティング会社であり、過去には、国土交通省、内閣官房、防衛省などの外部委託調査を受注していたことはあります。しかしながら、2012年12月に木原の公設秘書となってからは、外部委託調査に関わる時間は物理的に消失し、コンサルティングとしての活動は、停止状態にありました」
秘書給与法などに詳しい神戸学院大の上脇博之教授はこう指摘する。
「政務官や首相補佐官は様々な内部情報に触れる立場です。にもかかわらず、政策秘書が関連事業を経営しているとなれば、利益相反の疑いが拭えない。まして、今回の場合は国家の安全保障に直結する分野です。木原氏には透明性のある説明が求められるでしょう」
9月27日(水)12時配信の「 週刊文春 電子版 」および9月28日(木)発売の「週刊文春」では、篠田氏が経営する防衛コンサル企業問題のほか、タカ派として知られる木原氏の“意外な過去”、さらに森喜朗元首相に媚びてきた小渕優子選対委員長の実像、加藤鮎子こども政策相と“詐欺業者”の蜜月写真、秋本真利衆院議員と元警視総監の妹の奇怪な関係などについても報じている。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年10月5日号)