解散命令は「法人への死刑宣告」 旧統一教会は活動続けられる?

政府は、宗教法人法に基づき、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令を13日にも東京地裁に請求する方針だ。「宗教法人に対する死刑宣告」ともいわれる解散命令とは、どのようなものなのかを解説する。【李英浩】
どんな時に出せるのか?
「解散命令」は、裁判所の判断で宗教法人格を奪う手続きだ。具体的には①法令に違反し、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる②宗教団体の目的を著しく逸脱した③代表役員が1年以上いない――などの要件がある。
所轄庁(文部科学省または都道府県)や検察官がいずれかの要件を満たしたと判断すれば、裁判所に解散命令を請求できる。
宗教法人とは?
そもそも宗教法人とは、どんな組織なのか。宗教法人法では、礼拝施設を持ち、教義を広めたり、儀式行事をしたりする組織を宗教団体と定めている。
所轄庁の認証を経て法人格を取得した場合、その団体の宗教活動には公益性があるとみなされ、さまざまな税制優遇が受けられる。
境内には、固定資産税が課されず、法人税もかからない。さい銭やお布施などの収入も非課税だ。一般企業のように「不動産販売業」や「旅館業」など34業種の収益事業を営む場合は、課税の対象になるものの、税率は優遇される。
「質問権」とは?
宗教法人の行為が解散要件を満たす疑いがあれば、所轄庁は、宗教法人法に基づく「質問権」を使い、教団の運営実態を尋ねたり、関連資料を求めたりすることができる。ただ、宗教施設などへ立ち入るには同意を要するといった制限もある。法人側が質問に答えなかったり、うその報告をしたりすると、行政罰の一つである過料(10万円以下)が科される。
高いハードルの背景
宗教法人法が、解散要件に高いハードルを設け、所轄庁による権限行使も抑制的にしか認めていない背景には、「信教の自由」を保障する日本国憲法の精神がある。宗教団体の関係者が相次いで検挙されるなど、政府が宗教弾圧を進めた戦前の反省もあり、同法ではいかなる規定も「(宗教行為を)制限するものと解釈してはならない」としている。
「法令違反」で解散 前例は?
文科省が旧統一教会の解散請求を判断するまでには、霊感商法や高額献金の要求など、教団側が民事裁判で賠償責任を問われた数々の金銭トラブルが、要件①の「法令違反」に当たるかどうかが、ポイントとされてきた。
ただ、①の「法令違反」に基づいて過去に解散命令が確定したのは、地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教と、霊視商法詐欺事件を起こした明覚寺(和歌山県)のみ。旧統一教会と異なり、いずれも教団の役員が刑事責任を問われている。
岸田文雄首相は昨年10月、「組織性、悪質性、継続性」が確認できれば、民法上の不法行為も解散の要件に含まれうるとする解釈を示した。文科省は昨年11月以降、7回にわたる質問権の行使によって、組織体制や財産状況、献金の実態などにまつわる資料の提出を教団側に求めた。これに並行して金銭トラブルを巡る被害者への聞き取りも重ね、解散請求に向けた証拠の積み上げを進めてきた。
解散したらどうなる?
裁判所の命令を受けて宗教法人の解散が確定した後も、任意団体として活動を続けることは可能だ。しかし、税制上の優遇措置は受けられなくなり、組織運営が困難になる可能性もある。専門家の中には「(解散命令は)宗教法人に対する死刑宣告のようものだ」とする見方もある。
解散請求について、旧統一教会側は、過去10年以上にわたって法令順守を徹底してきたとし、政府が解散要件に示した「組織性、悪質性、継続性」についてはいずれも「全く該当しない」と反論。文科省の質問権行使も違法であるとの見解を示している。

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