交際を断った男に両親を殺害された女性、公判で「何で家族なの」と声絞り出す…謝罪しない男を「逃げている」と非難

甲府市で2021年に発生した殺人放火事件で、殺人罪などに問われた同市の無職男(21)の裁判員裁判の第20回公判が4日、甲府地裁であった。死亡した男性(当時55歳)夫婦の長女が意見陳述。家族が襲われたことに納得できず、自分を責める気持ちや、男への憤りを語った。この日で、検察側と弁護側は立証を終えた。11日に第21回公判が行われ、結審する見通し。
長女は、別室から音声と映像を送る「ビデオリンク方式」で意見を述べた。裁判の直前、両親が殺害された状況や、発見時の様子の説明を受けたといい、「私たちを守るために、痛くてつらくて苦しい思いをしたのだと思う。妹にはとても話せない」と語った。
男は長女に交際を断られたことをきっかけに、男性宅を襲った。長女は「巻き込んでしまった家族にどう償えばいいのか、どう責任を取ったらいいかをずっと考えている」と自分を責め続けていると説明した。
なぜ家族が襲われたか、裁判で男が話す動機を聞いても少しも納得できなかったといい、「もう一度、犯人に問いたいです」と話し、「何で家族なの」と言葉を絞り出した。
法廷で謝罪しない男を「自分は悪くないと考えているとしか思えない。目を背けて逃げている」と非難した。量刑に関しては、男が怖く、残された妹を守るためにも言わないと説明し、「元の笑顔あふれる妹に戻ってほしい。望みはただそれだけです」と述べた。
男性の姉は書面で意見陳述し、代理人弁護士が代読した。男性が亡くなる直前にかけた110番の音声を聞いたが、ろれつが回らず、やっとの様子だったとして、「どれだけ痛くてつらかったのだろう。胸が張り裂けそうだった」と記した。
法廷での男の姿から更生の意欲は全くなく、可能性もないと感じたといい、「亡くなった弟夫婦があまりにかわいそうでならない」とつづった。「2人の無念さを思うと極刑を望む。天国にいる2人も娘たちを守るために極刑を望んでいるはずだ」と訴えた。
11日の第21回公判では、検察側の論告求刑と弁護側の最終弁論が行われる。

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