企業向け保険でカルテルを結んだとして、公正取引委員会は19日、東京海上日動火災保険▽損害保険ジャパン▽三井住友海上火災保険▽あいおいニッセイ同和損害保険――の損害保険大手4社に独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で立ち入り検査に入った。公取委は、4社が多数の企業向け保険で価格調整を行った結果、保険料全体の上昇につながったとみており、4社に対する課徴金納付命令も視野に入れて調査を進める方針だ。
4社は▽コスモエネルギーホールディングス、コスモ石油▽JERA(ジェラ)▽京成電鉄▽エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)▽東京都――向けの保険契約で保険料の価格調整をした疑いがある。
あいおいニッセイ同和損害保険を除く3社は、シャープ向けの保険契約でも価格調整をしたとされる。保険契約を結んだ各社が損保側に支払っていた年間の保険料は約5億~80億円だった。
一連のカルテル疑惑で損保大手に立ち入り検査が入るのは初めて。カルテルに協力していたとみられる代理店2社も立ち入り検査を受けた。
関係者によると、企業向け保険での価格調整は遅くとも10年以上前から始まり大部分は火災保険だった。
企業向けの保険契約では各社が相乗りして事故時の支払いリスクを分散させる「共同保険」の方式が取られており、4社は、共同保険の仕組みを通じて価格を調整していたとされる。
都との契約は1社が単独で保険を引き受ける「単独保険」だったが、4社は「公用車の事故に備えた自動車保険はA社」「都道の瑕疵(かし)による事故に備えた道路賠償責任保険はB社」というように、保険対象ごとに単独保険の受注企業を決めて価格調整していたという。
調整には各社の入札担当者のほか、管理職も関わり、メールや対面で行われていたという。
損保業界は1990年代以降の業界再編によって、4社が市場シェアの約9割を占め、寡占化が進んでいる。公取委は、こうした事情がカルテルにつながったとみている。4社は「調査に協力していく」とのコメントを出した。【渡辺暢】