2015年のクリスマスの日から長く辛い8年間でした…高橋まつりさんの母の手記全文

大手広告会社・電通(東京)の新入社員だった高橋まつりさんが、24歳で過労自殺してから25日で8年となった。母親の幸美さん(60)が公表した手記の全文は以下の通り。
まつり生まれてきてくれてありがとう。大好きだよ。まつりに会いたいよ。
一緒に過ごした24年間、数えきれない幸せを私にくれました。まつりのはじけるような笑い声。「ねえねえ、お母さん、聞いて、聞いて」と早口のおしゃべりで沢山の話を聞かせてくれました。まつりの笑顔が私の生きる希望でした。まつりがいたからどんなことでも頑張れました。「お母さん大好き」と言って抱きしめてくれた温もりを決して忘れることはありません。
2015年のクリスマスの日から長く辛い8年間でした。今でもまつりがケーキを抱えて帰ってきてくれるような気がします。でもどんなに待ちわびても、まつりは帰ってきてくれることはなく、愛する娘を失った悲しみは決して癒えることはありません。
電通は7月に「ハラスメント撲滅・防止宣言」を発表しました。労働環境の改善を行い、社員が生き生きと働ける取り組みを継続してくれていると思います。まつりが生きていたら32歳、入社8年目。人生も仕事もいっぱいがんばって、たくさんの愛する人と人生を分かち合い、幸せな人生を生きていたにちがいありません。
会社が変われるチャンスは何度もあったのに、どうしてもっと早くにそのような取り組みを行っていなかったのか本当に悔しくてなりません。00年の「電通事件」最高裁判決の時。労基署から是正勧告を受けた時。まつりが生きていた時に改善をしてくれていたら、亡くなることはなかったと思います。二度と社員がまつりのような思いをすることのないように取り組みを続けて、社員の健康と命を守り、生き生きと働ける会社であることを願っています。
この8年間で長時間労働に対する国民の意識は少しずつ変わってきたと思います。しかし過労死防止法制定からまもなく10年、様々な取り組みが行われてきましたが、過労死や勤務問題を原因とする精神疾患は増加しています。
過労死された医師や宝塚のハラスメントの出来事は本当に悲しいことです。長時間労働が当たり前の医療現場や厳しい上下関係を重んじてきた劇団の文化は、当時の電通の社風が思い起こされてなりません。人としてもビジネスの上でも最も大切なことは、働くすべての人の人権を尊重した経営を行うことです。どうか経営者の方は人権侵害に対して確固たる姿勢で経営を行って欲しいと思います。
過労死撲滅が実現していないことに対して、国は働き方改革の見直しも視野にいれて、一刻も早く実効性のある対策を講じて欲しいと思います。過重労働やハラスメントが原因で苦しんだり、病気になったり、命を落とす人がいなくなるよう心から願っています。
15年12月、亡くなる12日前にミュージカルに連れて行ってくれたことが昨日のことのようです。当時私に子宮 頸 がんの疑いがあり、「お母さんがんかもしれない」とまつりは泣きました。手術の結果が陰性だったので、「快気祝いね」と観劇の後レストランに連れて行ってくれました。食事の後に「お母さんいつまでも元気でね」とメッセージをくれました。いつまでも元気でまつりと一緒に生きたいと思いました。
あれから7年後の昨年、私は子宮体がんと診断されました。まつりを悲しませないように、手術をうけ、抗がん剤治療を乗り越えました。体調は完全ではありませんが、青森、茨城、和歌山、鹿児島のシンポジウムに参加して、過労死防止活動を続けています。誰もが安心して働き、誰もが希望を持って人生をおくれる国になるように、まつりと共に力を尽くしていきたいと思います。

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