死を招く“咳止め薬の一気飲み”「オーバードーズ」がついに小学生にも蔓延 今では薬物依存の6割以上が市販薬に

“薬物汚染”がついに小学生にまで広がり始めている。13日、東京都目黒区内の小学校で、女子児童2人が薬を過剰摂取(オーバードーズ)して、救急搬送されたのだ。
「児童は高学年の女子2人。インターネットで咳止め薬を大量に飲むとトリップできる、などとする情報を見て、興味本位で学校に持ち込んだようです」(全国紙社会部記者)
主に未成年者が使う咳止め薬と、薬物依存症を想起させる「オーバードーズ」とは、にわかには結びつかない。しかし、最近、SNSなどではこうした合法ドラッグによるオーバードーズを略して「OD」と呼び、体験談などの投稿が相次いでいる。
咳止め薬で意識不明になり搬送された10代の女性
薬物問題に詳しい関係者が明かす。
「咳止め薬はシロップ状のものをごく少量飲むのが前提ですが、一気飲みするなど想定されている用量を度外視して大量に摂取すると、多幸感が得られたり浮遊感が得られたりするなどの副作用があることが知られています。薬物に造詣の深かった作家、故中島らも氏が過去の著作で何度も触れていましたが、現在の若者の間での蔓延は明らかにSNSの影響でしょう」
特に「咳止め薬」によるトラブルが目立っている。小学生が搬送された翌日の14日には、足立区の路上で20代の男性と10代後半の女性のカップルが倒れているのがみつかり、女性は一時、意識不明の状態で搬送されたが、これも咳止め薬のオーバードーズが原因だったと判明している。
大阪で高1の女子生徒がオーバードーズで死亡?
最大の問題は、咳止め薬が死を招くこともある点だ。11月に大阪府内で死亡した中国籍の高校1年の女子生徒の死因も咳止め薬のオーバードーズだった疑いがあるという。
「生徒の体内からは致死量を超える咳止め薬の成分が検出され、生徒を自宅に連れ去ったとして大阪府警が今月に入って未成年者略取の疑いで橘孝憲容疑者(58)を逮捕しています。生徒は咳止め薬4箱を買ってから橘容疑者に迎えに来るよう依頼するメッセージを送っており、咳止め薬依存だった可能性があります」(前出・記者)
市販薬の依存症が若者を中心に急増しているのは統計にも表れている。
国立精神・神経医療研究センターの調査で薬物依存症の治療を受けた10代の患者が使っていた薬物の内訳を見ると、2014年はほぼ半数が危険ドラッグだったが、22年には6割以上が市販薬になっていた。
捜査関係者が明かす。
「厚生労働省はこうした市販薬の販売を1人1箱に限るよう指導しているが、店によっては徹底されていない。今後は店の取り締まりも視野に入ってくる」
オーバードーズの蔓延を止めることはできるか。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年12月28日号)

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