中国やロシアの「キラー衛星」に対抗、自衛隊の通信衛星で宇宙監視…30年代打ち上げ

政府は、宇宙空間の監視を強化するため、2030年代に打ち上げる自衛隊の次期通信衛星に監視機能を追加する方向で検討に入った。来年度から、衛星に搭載する小型の監視機器の開発に着手する。他国の衛星を攻撃する「衛星攻撃衛星(キラー衛星)」の開発を進める中国やロシアに対抗する狙いがある。
通信衛星は、自衛隊の部隊間で秘匿性の高い通信を行うための衛星で、高度約3万6000キロ・メートルの静止軌道を回る。宇宙空間では、通信衛星を狙うキラー衛星が活動しているほか、中露の衛星破壊実験などで宇宙ごみ(スペースデブリ)も大量発生しており、衝突などの事態を回避するための監視強化が課題となっている。
自衛隊は、通信衛星を3基体制で運用する方針で、監視を担う衛星も、少なくとも3基が必要とされる。政府は監視に特化した「宇宙領域把握(SDA)衛星」の初号機を26年度に打ち上げる計画を進めているものの、SDA衛星の打ち上げには約1000億円かかり、残り2基の打ち上げはめどが立っていない。
そこで、通信衛星そのものに監視機能を追加することで、SDA衛星の代替を目指す。自衛隊が現在運用している通信衛星2基は30~31年度に寿命を迎えることから、その後継機に監視センサーなどを搭載する方向だ。中露は他国の衛星に地上からの電波妨害も行っており、監視機器とともに電波妨害を防ぐ装置の搭載も検討している。
衛星に搭載するには、監視機器を小型化する必要があり、防衛省は、24年度当初予算案に関連費2億円を計上した。来年度から3年かけて開発を進める予定で、SDA衛星を打ち上げる場合と、小型機器を開発して通信衛星に搭載する場合のコスト比較などを慎重に進める方針だ。
通信衛星が回る軌道には、北朝鮮のミサイル発射などを監視する米軍の早期警戒衛星もあり、政府は、自国の監視体制を早急に整備するとともに、米国とも緊密に連携する考えだ。
宇宙監視の強化を巡っては、政府が昨年12月に決定した防衛力整備計画に、監視を担う衛星を複数基体制とすることが明記された。

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