調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の改革を巡る議論が停滞している。使途公開や未使用分の国庫返納に対し、自民党が消極的な姿勢を崩していないためだ。日本維新の会と国民民主党は、自民派閥の裏金化疑惑に絡め、改革に向けた与野党協議を再開するよう求めており、来年の通常国会でも焦点となりそうだ。
「裏金」と共に通常国会焦点
国民の玉木代表は19日の記者会見で、「裏金問題で『政治とカネ』の問題に厳しい目が向いている。(旧文通費改革に)積極的に取り組まなければ、政治に対する信頼は回復しない」と強調した。
現行法の旧文通費は、使途を明らかにする必要がない。このため、自民内では「使途を公開されると、自由に政治活動に使えるお金が減ってしまう」と慎重論が根強い。
自民、維新両党は今年2月に改革に向けた協議の再開で一致した。しかし、13日に閉会した臨時国会で協議は一度も開かれなかった。維新の馬場代表は8日の衆院予算委員会で、「旧文通費は税金なので、使い道の公開は当たり前だ。余ったお金は国庫に返納すべきだ」と主張した。これに対し、岸田首相(自民党総裁)は「党として議論に引き続き貢献していく」と述べるにとどめた。
こうした自民の姿勢もあって、維新は13日に立憲民主党が提出した岸田内閣に対する不信任決議案に賛成した。先の通常国会では、維新は不信任案に反対していた。
旧文通費に注目が集まったのは、2021年10月31日の衆院選で当選した新人議員らに、在職1日で同月分の旧文通費が満額支給されたことがきっかけだった。与野党が協議を重ね、22年4月には支給を月割りから日割りに変更し、目的を「公の書類の発送や通信」から「国政に関する調査研究」などに拡大する法改正が行われた。
ただ、この時には使途公開や未使用分の国庫返納の規定は盛り込まれなかった。こうした改革に関しては、維新と国民に加え、立民も前向きな姿勢を示すようになっている。
自民派閥の裏金化疑惑を受けて、国民の政治不信は高まっており、与野党からは「政治とカネ」を巡る問題への対応を急ぐべきだとの意見も出ている。自民中堅は、「改革に消極的だと見られれば、党への不信感がさらに強まってしまう」と危機感を募らせている。
◆調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)=国会議員に歳費とは別に支給され、月額100万円。国会法と歳費法に根拠があり、領収書なしで幅広い使途が認められ、使い残した分を国庫に返納する必要はない。以前は月に1日の在職だけでも1か月分を全て受け取り可能だった。2022年4月の法改正で日割り支給に変更し、名称も「文書通信交通滞在費」から「調査研究広報滞在費」に変更した。