新型コロナワクチンを接種しなかった女性消防職員への差別的な対応を、第三者委員会が「重大な人権侵害」と指摘しました。ワクチンを拒否する女性に長時間、執拗な接種要請を行っていたということです。 調査報告書などによりますと、滋賀県の甲賀広域行政組合消防本部で勤務していた女性(30代)はおととし(2021年)4月、「自分は体質的にも打ちたくない」と伝えて、全職員が対象の新型コロナワクチン接種を受けなかったところ、「接種拒否者」としてほかの職員と離れた机で勤務させられたり、共用の更衣室の使用を制限されたりするなどの対応を受けました。 第三者委によりますと、接種しない意思を伝えた後に、繰り返し、長時間にわたるワクチン接種要請が行われていたことも確認されました。 説得の多くは1時間から1時間半の長さで、直属の上長だけでなく、複数の管理職が、個別に面談を繰り返していたということです。 女性は、感染していないのに感染しているものとして扱う感じに受け取り、「どうなるのか、どのようにされるのか」と不安、さらに恐怖感を抱いたといいます。 その後、上司とのやり取りの中で「返答は、ワクチン接種以外の選択肢はないと思う」と話され、上司も追い詰められているように感じたことから決意して退職したということです。 問題を調査していた第三者委員会は26日、中間報告書を提出。「ワクチンの接種は個人が自由な意思で決定すべき事例で、これは消防職員を含む医療従事者にも該当する。しかし消防本部は一定の強制力をもって接種を要請できるとの認識に立ち、長時間、執拗に接種要請を行ってきた」としました。 また「本来、接種拒否に正当な理由は不要なのに、正当な理由が認められないと判断し、女性に書面を作成させ、その内容を削除や加筆を行った」としました。(第三者委員会・新川達郎委員長)「客観的な根拠・感染の有無と無関係にこうした業務区別が強制されたこと自体、大変重大なハラスメント行為、また重大な人権侵害に当たるとも考えられる」 第三者委は「違法、不当、または不適切な決定と対応があった」として一連の対応に関与した職員の処分などを提言しました。今年度末までに最終報告をまとめる方針です。