1日に能登半島で発生した地震で、最大震度7を観測した石川県志賀町では多くの家屋が倒壊したり傾いたりし、住民たちは2日、公民館やホテル、小学校など避難先での2度目の不安な夜を迎えた。「もう帰るところがない」「余震が怖い」と涙ぐむ人も。ボランティアで倒壊家屋の片づけを手伝った高校生は「今は悲しいけれど、地域の人と一緒に街を立て直したい」と前を向いた。
「母屋と離れがガシャガシャッと音を立てて崩れていった」。同町末吉で被災した河野麗子さん(82)は、明治時代初期に建築された愛着のある自宅が全壊した。自宅にいた次女と長男にもけがはなく、津波を警戒して高台へ。その後は公民館に避難し、寒さをしのいだ。
「きれいですてきな家だったのに、今は見る影もない。もう帰るところがないんだと思うとつらい」。河野さんはこう話し、涙を浮かべた。
多くの人が身を寄せた地元の体育館では、レトルトのおかゆとインスタントトイレが配られた。家族とともに避難した佐藤明日子さん(57)は「こんなにすごい地震は初めてで、死ぬかと思った」と怖がり、「震度7の地震の感覚が残っていて、いつ来るかわからない余震への不安でつらい」と訴えた。
小学校に身を寄せた寺尾友克さん(65)は自宅の壁が大きく割れ、基礎も損傷するなどして住めなくなったという。「とりあえず避難所は暖かくて助かっている。早く日常に戻ってほしい」と疲れをにじませた。
自宅に亀裂が入り、いつ倒壊するか分からないというパートの女性(31)は友人家族とともに1日夜は高台にあるホテルへ避難。ロビーで寝たが、たびたび起こる余震や緊急地震速報の音に驚いて子供たちが泣き、よく眠れなかった。
一夜明けた2日、自宅に戻って片づけをしていたが、大きな余震で怖くなり、小学校へ。断水のため、地震発生後、風呂には入れていない。「3日以降は友人の家に泊めてもらうかもしれないが何も決まっていない」という。
石川県能登町の高校で寮生活を送る高校2年の池端汐歩(ゆう)さん(17)は、志賀町末吉の実家に帰省中に被災した。幸い自宅も家族も無事で、津波から避難する高齢者の手を引いて坂の上に向かった。
一夜明けた2日は友人や地域住民とともに、倒壊した元呉服店の片付けをするボランティアに参加。「小さい頃から思い出のある地域で、制服もこの呉服店で買った。今は悲しい気持ちだが、それでも地域の人が協力して街を一緒に立て直そうとしていることがうれしい」と語った。