能登半島では2020年12月ごろから群発地震が起きてきたが、今回の地震ははるかに規模が大きい。どんなメカニズムが考えられるのか。
これまでの群発地震は、いずれも能登半島の先端近くで起き、マグニチュード(M)の最大は23年5月5日に起きたM6・5だった。
一方、今回の地震はM7・6と40倍以上のエネルギーがあり、余震も広範囲で起きたのが特徴だ。余震のエリアは、能登半島西側の石川県輪島市沖から、佐渡島(新潟県)西の沖合まで約130キロに及ぶ。国土地理院によると、輪島市では約4メートルの隆起や、約1・2メートル西南西方向へのずれが観測された。
能登半島は、日本列島が東西から押される境界付近にあり、水平方向に圧縮されてできる「逆断層」が集中している。産業技術総合研究所によると、能登半島北側の沿岸には、M7級を含む地震を起こすとされる海底活断層が複数走る。政府の地震調査委員会は、今回の震源断層について、北東から南西に延びる長さ150キロ程度の逆断層とみられると発表した。
複数の専門家が指摘するのが、地下の水(流体)が、断層運動を誘発した可能性だ。
加藤愛太郎・東大地震研究所教授(地震学)によると、一連の群発地震も、地下深くから上昇した流体が起こしている。断層の隙間(すきま)に入り込んですべりやすくさせたり、体感できないほどゆっくり断層をすべらせたり、長時間かけて岩石を変形させ、地震を起こすひずみをためたりしているとみられる。
加藤さんは「これまでの群発地震活動によって、ひずみがたまった領域の断層の一つに流体が入り込んですべりやすくさせ、地震につながった可能性がある」とみる。
石川有三・静岡大客員教授(地震学)によると、能登半島では水平方向に力がかかるため、地下深くから上がってきた流体が地上に抜けず、水平に広がりやすい。すると断層面に流体が入り込んでひずみがたまったり、割れやすくなったりするという。
後藤忠徳・兵庫県立大教授(地球物理学)は、10本弱の一連の活断層が一斉に動いた可能性があると指摘する。「動いた距離は数十キロ超にわたるのではないか」と話した。
ただし、動いたのが能登沖の海底活断層なのか、それとも未知の断層なのかはわかっていない。流体が関与したかどうかについても、気象庁は「わからない」と説明している。
平松良浩・金沢大教授(地震学)は「流体が関与したこれまでの地殻変動で、周りの断層に地震を起こしやすくする力がかかっていた。今回の地震はそうした力を受けて起きた地震だ」と説明。流体が断層に入り込んだとする見方は、あくまで可能性の一つだとみる。【垂水友里香、岡田英、菅沼舞】