津波に流された車が自宅に…「嫁に来て62年、こんな被害初めて」珠洲市の82歳女性 被害の大きさ語る

「困りごとも足りないものもないですよ。十分足りてます」
能登半島地震で甚大な被害が出た石川県珠洲(すず)市三崎町寺家地区。近隣住民らが身を寄せる「川上本町集会所」で5日、新川恵美子さん(82)が気丈に話した。電気も水道も止まった状態で避難所生活を送ってきた。高齢の体にこたえないはずはないが、「食べ物も若いお母さんたちが用意してくれる。うれしいですよ」と笑顔もみせた。
海辺の家でともに暮らす夫の健二さん(90)と迎えた新年の夕方、大きな揺れに見舞われた。津波が来ると聞き、あわてて高台へと避難した。普段から地震に備えて必要なものを用意していたが、「何にも持って逃げられなかった」。当日は高台にある農家のビニールハウスで一夜を明かした。
翌日、自宅に戻ると、家の中に他人の車が突っ込んでいた。自宅前の公営駐車場から津波で流されてきたものだった。地震の揺れと津波の影響で家の中はめちゃくちゃで、「もう住むことはできない」と肩を落とす。
その後、避難所に身を寄せた恵美子さん。「隣の村からここに嫁にきて62年。大きな地震も何度かあったけれど、こんなに被害が大きいのは初めてだ」と振り返り、「元通りの生活に戻れるまで何日かかるか分からないけど頑張る」と決意していた。(外崎晃彦)

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