最大震度7を観測した能登半島地震を巡り、兵庫県南あわじ市は7日朝、被災者支援のため、市所有の自走式水洗トイレカーなどと男性職員3人を、甚大な被害を受けた半島先端の石川県珠洲市に派遣した。このトイレカーが、実際の災害現場に出動するのは今回が初めてとなる。
関西広域連合が決めた「対口支援」(カウンターパート支援)に基づき、県と神戸市などが支援を担当することから珠洲市へ派遣される。南あわじ市から向かうのは市危機管理課の阿部志郎課長(52)、奈良雄規係長(45)、沖冴紀主事(28)の3人。第1陣の3人は14日に帰還する見込み。
南海トラフ巨大地震が起きた場合、被害が確実視されている南あわじ市は、令和2年に自走式水洗トイレカー1台を導入した。車椅子だけでなくオストメイト(人工肛門、人工膀胱(ぼうこう)利用者)の人でも利用できる仕様。最大1千回程度の利用が可能で、トイレットペーパー288ロール、生理用品2千枚なども併せて持っていく。
地震をはじめとする大規模災害発生時は電気や水道といったライフラインが遮断され、避難所などでのトイレ環境は劣悪になりがち。このため、被災者がトイレに行く回数を減らそうと水分や食事を控えることで体調を崩し、エコノミークラス症候群や心筋梗塞などを発病して災害関連死につながると指摘されている。実際、今回の能登半島地震でも被災各地でトイレに関する問題が明らかになっており、トイレカーの活躍が期待される。
7日朝、市役所前で行われた出発式で守本憲弘市長は「想定しない困難もあると思うが、現地のニーズを第一に考えて、苦しんでいる皆さんの役に立てるよう頑張ってほしい」と激励した。平成30年の西日本豪雨での出動経験を持つ阿部課長は「災害が起こると、トイレ環境の問題が最重要課題であると思っている」と強調。「(トイレカー派遣を通じ)被災された方にほんの少しでも、ほんの一瞬でも、『ほっとできる時間』を届けることができれば」と語った。