石川県七尾市の自宅が能登半島地震で被災し、東京都の23区内にある都営住宅で避難生活を始めた奥井俊文さん(67)、真理子さん(67)夫婦が16日、取材に応じた。俊文さんは今回に加え平成19年、昨年と3回の震災に見舞われた自宅はもう住める状況にないと話し、「七尾には戻りたくない」と肩を落とした。
津波警報の中でパニックになりながら逃げたという奥井さん夫婦。2人暮らしの自宅に津波は到達しなかったものの、家財道具が倒れ床にはガラスの破片が散乱する。被災後は金沢市と名古屋市の親族宅で世話になり、都営住宅に移る直前の約1週間は埼玉県八潮市の長女宅に身を寄せた。
都営住宅に移ることを後押ししたのは、自宅の惨状に加えて持病を抱える自身の体調。被災後、俊文さんが必要とする週3回各4時間の透析を石川県内で受けることは困難だった。現在は娘が住む八潮市のクリニックで透析を受けられる環境になった。
都営住宅での生活は13日から始まった。「(大きな地震が)1回ならいいが、2回、3回とくると心が痛む」と俊文さん。真理子さんは「(関係者に)とても親切にしてもらってありがたい」と話す。
都は、能登半島地震で自宅に住むことが困難になった被災者を対象に、都営住宅100戸を無償提供。入居期間は最長1年間で、布団やエアコン、冷蔵庫、洗濯機なども無償で用意した。都によると、15日現在で128件の問い合わせがあり、50世帯の入居が決定、うち奥井さん夫婦を含む7世帯がすでに入居している。小池百合子知事は「現地のニーズに応じて対応できる」としており、都営住宅の追加提供を視野に入れている。