「旧式」装備を大人買いする防衛省の無責任さ 無反動砲に見る「ずさんな装備調達」の実態

防衛装備庁と自衛隊、とくに陸上自衛隊は装備調達がずさんである。その典型例が、スウェーデンのサーブ社が開発する口径84mmの無反動砲「カールグスタフM3」の調達だ。
【写真】豊和工業がライセンス生産していた84mm無反動砲「カールグスタフM2」
無反動砲とは、発射の際に発生する爆風を後方に噴出させて、砲身の後退を軽減するようにつくられた火砲。小型軽量で、主に装甲車両や陣地などの攻撃に使用される。また照明弾を打ち上げるためにも多用されている。
陸幕は継続調達が不明なM3を選択
陸上自衛隊は豊和工業がライセンス生産していたカールグスタフM2の後継として、その後開発されたM3を2012年度に採用した。M3は輸入調達となったが、輸入となったのは調達数が国内生産すると非現実的なコストになるからだろう。輸入は住商エアロシステムが担当している。
実は2014年にサーブ社はさらに次の世代のM4を発表していた。陸自が採用した2012年以前からM4の開発はすでにアナウンスされていた。M4の生産が開始されればM3の生産は終了となる。
数年待てば新型が調達できるのに、陸上幕僚監部(陸幕)はあえて生産終了直前に旧式化し、継続調達が可能かどうか不明なM3を選択したのだ。
M3の重量は約10キロだがM4はそれより3.4キロも軽い。近年、歩兵の個人装備の過重化が問題となっており、3.4キロの差は大変大きい。全長は950ミリでM3よりも115ミリ短い。安全装置が追加され、弾薬を装填したたま安全に携行することが可能である。
M4は火器管制装置が装備でき、電子信管をセットすることによって、敵の頭上で弾頭を空中炸裂させるプログラム機能も有している。性能には歴然とした差がある。
そしてM3の調達も混迷した。2014年度から2022年度まで61門、年に平均10門に満たない。これは軍隊の調達数とは言えないほど少ない。しかも2017年度から5年間は調達されなかった。
陸幕はほかの装備の調達を優先したというが、もうすぐ生産が終わろうという装備の調達を5年間も停止したのだ。
防衛予算増で325門を大人買い
【カールグスタフM3の調達推移】
2012年度 3門 0.3億円 2013年度 17門 2億円 2014年度 24門 3億円 2015年度 6門 0.6億円 2016年度 3門 0.3億円 2017年度 0門 0円 2018年度 0門 0円 2019年度 0門 0円 2020年度 0門 0円 2021年度 0門 0円 2022年度 8門 1.1億円 2023年度 325門 35億円

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