「正月以降、初めての洗濯」 避難所に移動式ランドリー 兵庫の会社設置

元日に起きた能登半島地震の影響により断水が続いている石川県珠洲(すず)市の避難所で、洗濯がままならない被災者を支援しようと、移動式ランドリーが設置された。ランドリーを所有する兵庫県養父(やぶ)市の運送会社は「洗濯の支援は見落とされがち。少しでも不安をなくしたい」としている。
「とてもすっきりしました。ありがとうございます」
24日午前、避難所となっている珠洲市立上戸小学校で、洗濯を終えた衣服が入った袋を大切そうに抱えた被災者が、ほっとした様子でランドリーを後にしていった。
被災地では地震以降、広域的に断水が続き、風呂やトイレのほか、洗濯にも大きな影響が出ている。各避難所では、バケツやたらいに雨水や雪をためたり、川から水をくんだりして洗濯している。ただ、手洗いのため下着・肌着類しか洗うことができず、環境の改善を求める声が出ていた。公務員の女性(42)は「せっかくお風呂に入れても、汚れた服を着なければならないのは苦痛」と話す。
こうした状況を受け、珠洲市の支援を担当する「対口(たいこう)支援」自治体の一つ、兵庫県養父市が、移動式ランドリーを所有する市内の「山本運輸」に派遣を要請。コンテナ内に9台のドラム式洗濯乾燥機が置かれており、22日から約1日半かけて運んだ。自衛隊が仮設の風呂用に濾過(ろか)した川の水を、洗濯に使用している。
輸送に同行した同社の山本洋介社長(47)は「洗濯できず困っているとSNS(交流サイト)で多くの連絡があった。一日でも早く届けたいという思いだった」と明かす。
ランドリーは24日から本格稼働。9台の洗濯乾燥機がすぐに利用者で埋まった。毎日午前7時~午後7時に稼働し、1日35~45人が利用できるという。同小に避難する主婦(74)は「正月以来、やっと洗濯できてうれしい。ありがたい」と喜んでいた。
石川県によると、珠洲市の水道は2月末から順次、仮復旧する予定だが、遅い地域は4月以降にずれ込む見込み。山本社長は、断水の間はランドリーを設置し続けるとし、「洗濯できてほっとされた顔を見られてよかった。少しでも被災地の役に立てば」と話した。(石橋明日佳)

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