ウィーン国立歌劇場やボストン交響楽団などの音楽監督を務め、戦後日本のクラシック界をけん引した世界的指揮者の小澤征爾さんが6日、心不全のため亡くなった。
小澤さんは地方の芸術振興にも熱心だった。水戸市では音楽評論家で恩師の吉田秀和氏が水戸芸術館の館長を務めた縁で、水戸室内管弦楽団を長年指揮。吉田氏が亡くなった後の2013年には後任の館長に就任した。
世界的ピアニストのマルタ・アルゲリッチさんを同館に迎えたコンサートで、市内の高校生らにリハーサルも公開してきた。高橋靖市長は「芸術館を世界レベルに育て、館の活動が市民に身近に感じるようにも努めていただいた」と惜しむコメントを発表した。
小澤さんが28年ほど前から楽団員と頻繁に訪れた芸術館近くの居酒屋「夢屋」の店主、黒澤千里さん(73)は「超一流の音楽家で、人間性も超一流で豊かな方だった」と話す。約20年前、カウンターで飲んでいた小澤さんは若い男性客から「このおじさん、見たことある。確か有名人」と言われた際、ニコニコして「ありがとう」と返していたという。
黒澤さんは「良い人だと思った。小さいことにこだわらずおうようだった」としみじみ振り返り、「ショックですね。芸術館にも関わった水戸の大恩人。ご苦労様でした」と深く感謝した。【木許はるみ】