輪島市唯一の法律事務所が被災、弁護士「空白地域」に…生活再建へ法律相談のニーズ高まる見通し

石川県輪島市では、市内唯一の法律事務所が能登半島地震の影響で閉鎖を余儀なくされ、弁護士の「空白地域」となった。生活再建の動きが本格化している被災地では今後、 罹災 証明書の申請や壊れた建物を巡る法律相談のニーズが高まるとみられ、金沢弁護士会が電話相談などの支援に乗り出している。(荒田憲助)
石井 翔大 弁護士(37)は1月末、輪島市中心部の河井町に構えた法律事務所を閉鎖した。「輪島を離れることになり、無念。今後も被災地にサービスを届ける方法を考え、奥能登の皆さんを支えたい」と語る。
日本弁護士連合会(日弁連)が弁護士不在地域に設置する公設事務所の所長として2015年に赴任。19年に独立し、離婚相談や遺言作成などに携わってきた。
元日に発生した地震で事務所は断水。備品も故障して復旧の見込みが立たず、能美市の法律事務所に移籍した。今後はこれまで受けた仕事を継続しつつ、被災地からの2次避難者を含めた相談も受け付けるという。
日弁連のまとめでは、16年の熊本地震では無料相談窓口(対面・電話)に、1年間で1万2000件超の問い合わせがあった。発生から1か月前後がピークで、全壊した建物の家賃や、住宅ローンの支払いに関するものが多かったという。
石井さんの事務所の閉鎖で、珠洲市などを含めた奥能登4市町の法律事務所は、穴水町の「おくのと法律事務所」のみになった。同事務所の中上勇輔弁護士は「今後、法律相談のニーズが増えるとみられ、支援を行き渡らせるには不十分だ」と心配する。
金沢弁護士会は1月4日から電話による無料相談を実施している。2月15日までに343件の相談があった。罹災証明書の申請方法のほか、「自宅が倒壊して隣の家の物を壊した」「隣の家が自宅に倒れかかってきた」といった内容などがあるという。
同弁護士会では、七尾市の避難所などにも弁護士を派遣して無料相談会を開いている。早川潤副会長は「弁護士が現地に行く必要を感じる。全国の弁護士会とも協力し、派遣範囲を少しずつ広げたい」と話す。
金沢弁護士会の無料相談窓口(080・8995・9483)は、平日午前10時~午後4時(正午~午後1時を除く)。電話で受け付けた後、担当弁護士から折り返しがある。

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