岸田首相〝訪朝前のめり〟の懸念 日朝首脳会談、駆け引き緊迫 国民・玉木氏が与正氏の談話問題視 拉致被害者一括帰国に主眼を

日朝首脳会談の開催に向けて、日本と北朝鮮の駆け引きが続けられている。最重要課題である日本人拉致事件や、核・ミサイル開発問題の完全解決を求める日本に対し、北朝鮮側は経済支援などを念頭に秋波を送ってきている。拉致被害者や被害者家族が高齢化するなか、拉致事件解決には一刻の猶予もない。岸田文雄首相は自身直轄で「ハイレベル協議」を主導すると宣言している。ただ、岸田内閣の支持率が「危険水域」に沈み込むなか、外交成果を政権浮揚の足掛かりにしたい焦りも感じられる。相手はニセ遺骨を送り付けてきた北朝鮮である。最大級の警戒が必要だ。
「私自身が主体的に動いて、トップ同士の関係を構築する」「昨今の日朝関係の現状に照らして、大胆に現状を変えなければならない必要性を強く感じている」
岸田首相は2月9日の衆院予算委員会で、拉致事件解決に向けた北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記との首脳会談実現への意欲をこうにじませた。
北朝鮮側の特異な動きも相次ぐ。
正恩氏は1月、祖父の金日成(キム・イルソン)主席以来、同国が掲げてきた南北平和統一という政策を転換し、韓国を「主敵」と憲法に明記するよう指示した。
一方、正恩氏は同月発災の能登半島地震を受け、岸田首相に「閣下」の敬称を付けて、お見舞いのメッセージを発表した。
さらに、正恩氏の妹、与正(ヨジョン)党副部長は今月15日、岸田首相を名指しし、「平壌(ピョンヤン)を訪問する日が来ることもあり得る」「(日朝は)いくらでも新しい未来をともに開ける」とする談話を朝鮮中央通信で発表した。
まさに、「北朝鮮トップや、その親族が、首相宛にメッセージを発信する異例ずくめの展開」(外交関係者)で、「政治とカネ」の問題が直撃して窮地の岸田首相や、官邸周辺の期待は一気に高まっているようだ。
ただ、日朝関係筋はこう警鐘を鳴らす。
「2002年の日朝首脳会談前後にも、拉致事件や核の問題を置き去りにして、一足飛びに『日朝国交正常化』を進めようとする動きがあった。北朝鮮には、豊富な埋蔵資源や安価な『労働力』がある。経済的な可能性や、利権への思惑は常に、日朝双方にある」
超党派の国会議員でつくる「日朝国交正常化推進議員連盟」は27日、国会内で総会を開いたが、〝不穏〟な一幕があった。
会長の衛藤征士郎元衆院副議長が、岸田首相の早期訪朝を要請する決議採択を求めたが、案文を問題視する声が複数の出席議員から上がり、大幅に修文することになったのだ。

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