能登半島地震の影響で、小中学校の在籍者数が激減した石川県北部の4市町では、保護者から学校生活への不安の声が出ている。兄は地元、妹は金沢市の学校を選択した家庭もある。運動場や公園が使えず、子供たちの心身への影響を懸念する声もある。
同県珠洲(すず)市の運送業、北浜正義さん(42)の一家はこの春、一つの決断をした。小学3年の長男(8)は引き続き地元の小学校に通うが、新1年生の長女(6)は避難先の金沢市の小学校を選んだ。
元日の地震で自宅が半壊し、一家で避難所暮らしをした。長女が余震を怖がる様子を見せたので、妻らと共に1月中旬、金沢へ2次避難した。一方、長男は友達と離れたくないことから、北浜さんと残ることにした。「本当は家族一緒がいいが、子供たちの気持ちを考えたら一時的に別々になるのは仕方ない」と話す。
同県輪島市の自営業、中小路武士さん(41)の小学5年の長女は、新年度も輪島の学校に通う。中小路さんが懸念しているのは、子供たちの遊び場が減ったことだ。遊具が壊れたままの公園もある。「この前も、うちの子の同級生が壊れた公園でけがをした。運動不足も心配だし、安心して遊べるようにしてあげたい」と願う。
教育関係者も、学校運営への懸念や不安を口にする。被災地の小中学校では、体育館が避難所になったり、運動場に仮設住宅が建てられたりしており、授業や行事への影響が避けられない状況だ。珠洲市の学校関係者は「このままでは体育の授業や運動会の開催は難しい。市内各地の学校を集約し、体育館や運動場を確保してもよかったのではないか」と指摘する。
4市町の公立小中学校在籍者は、地震前の昨年12月と比較して約2割減少した。元の自治体に住民票を置いたまま他市町の学校に通う区域外就学者もおり、今後在籍者数は回復に転じる可能性もある。【阿部弘賢】