元日に発生した能登半島地震は1日で3カ月。停電は解消されたものの、水道管の復旧作業が難航し、いまだ7860戸で断水が続く。水道管の耐震化の遅れなどについては、地方ならではの課題として浮き彫りとなった。ただ、土砂崩れや地割れなどの被害が多数にのぼった主要道路は、国などの緊急復旧によって8~9割が通行可能になっている。空港や鉄道の完全復旧もめどが立ち、仮設住宅の建設も進む。地震大国として課題は山積しているが、被災地は着実に復興に向けて歩み始めている。
水道耐震化を国が全面支援を
宮島昌克・金沢大名誉教授(ライフライン地震工学)
能登半島地震の被災地で断水の復旧に時間がかかっている理由はいくつかある。まず、地震の規模が平成7年の阪神大震災より大きく、直下型地震としては近年最大だったため、多くの水道施設や管路(主に水道管)に甚大な被害が出た。
さらに、水道施設の上流部にある取水施設をはじめ導水管や浄水場、送水管などにも多数の被害がみられた。水道システムは上流から被害を見つけて修繕していくことから、下流の配水管にたどり着くまで時間を要した。人口の多い地域の水道管路が網目状なのに対して、過疎地では樹枝状になっているため上流から一つ一つ修繕していくしかないという現状もある。
一方で、被災地周辺に宿泊施設が少なく、復旧のために全国から駆け付けた水道事業者の応援部隊は金沢市から被災地に通うことになった。地震で道路が寸断されたため、限られた道路に車が集中し渋滞が発生。移動に時間を取られ作業時間が少なくなったことも要因の一つだ。
まちづくりに沿った水道システムが必要
能登半島の各自治体で人口減少と高齢化が進んでいることを踏まえ、元通りに復旧するのではなく今後のまちづくりに沿った水道システムを新たに構築すべきだ。
最も重要なのは耐震化の推進だが、財力や人材ともに限りがあるため、被害が発生した場合に断水戸数や日数が大きくなる施設や管路を精査し、大きな影響を受ける箇所から取り組む必要がある。耐震化には多額の費用がかかり水道料金の値上げが必要になるかもしれないが、丁寧に説明し理解を得ることが不可欠だ。また、今回の被害を教訓に、被災した場合に備えて、応援を受ける際の体制や復興計画をあらかじめ考えておくことも欠かせない。
耐震化は国からの補助金があるものの、基本的には水道料金で賄われており十分とはいえない。補助率の大幅な引き上げが必要だ。道路や橋梁(きょうりょう)などと同様に社会を支える重要なインフラという認識のもと、水道施設や管路の耐震化を国が全面的に担うといった大幅な仕組みの転換があってもよいのではないか。
耐震率 石川県は37・9%
水道管の耐震適合率は、主要水道管の総延長のうち、想定される最大規模の地震に耐えられる割合を示す。令和4年度の全国平均は42.3%で前年度より1.1ポイント増となった。
都道府県別では神奈川や東京、千葉など首都圏が上位で、能登半島地震があった石川県は37.9%と、地方で低い傾向が顕著となっている。政府は国土強靱(きょうじん)化基本計画で、耐震適合率を10年度までに60%に引き上げる目標を掲げている。