【パリ時事】岸田文雄首相は2日午前(日本時間同日午後)、パリで開かれた経済協力開発機構(OECD)閣僚理事会の開会式で基調演説し、人工知能(AI)利用のルール整備に向けた国際枠組みの創設を表明した。OECDと東南アジアなど新興国との連携強化を訴え、日本が「アジア地域の架け橋となる」と強調した。
生成AIは偽情報拡散などのリスクが課題。日本は先進7カ国(G7)でAIルールを検討する枠組み「広島AIプロセス」を主導し、開発者向けの指針などを策定してきた。今回、同プロセスに賛同するOECD加盟国など49カ国・地域に枠組みを広げた「フレンズ(友好国)グループ」を創設した。
首相は「AIがもたらす人類共通の機会とリスクについて、共通の志を持つ国々で連携し、安全、安心で信頼できるAIを実現しよう」と呼び掛けた。
欧米中心のOECDの在り方について、首相は「国際社会が多極化や分断と紛争に直面し、不確実さと不透明さが増大する中、変化が求められている」と指摘。アルゼンチンやインドネシア、タイの加盟に向けた動きを歓迎し、「重要性を増す地域との連携強化はOECDが進むべき未来だ」と主張した。アフリカからの加盟申請にも期待を示した。
新興国などとの連携では「価値観の一方的な押し付けではなく、成長・発展に向けた『伴走者』となるべきだ」と述べ、配慮が必要と説いた。
経済的威圧への対応や重要技術・基幹インフラの保護など、中国を念頭に置いた課題も提起。「経済的強靱(きょうじん)性と経済安全保障を確保するための協力強化が必要になっている」と語り、閣僚理事会で議論を深める考えを示した。
日本は今年、OECDに加盟してから60周年の節目で閣僚理事会の議長国も務める。日本の首相による基調演説は2014年の安倍晋三氏以来。
[時事通信社]