岸田文雄首相は大型連休に合わせて、フランスとブラジル、パラグアイを訪問する6日間の外遊を続けている。首相自身が「(国民の)私への判断も含まれる」と語っていた衆院3補選(4月28日投開票)は、自民党が不戦敗を含めて「全敗」、立憲民主党が「全勝」という結果となった。野党は連休明けの国会で、政治資金規正法改正などの政治改革をめぐって攻勢を強める構えだ。ジャーナリストの長谷川幸洋氏は、3補選を受けた政治潮流を考察した。次期衆院選後、「3党連立」「4党連立」の可能性も。東京15区で飯山陽氏が健闘した日本保守党の全国規模の戦いにも注目した。 (ジャーナリスト 長谷川幸洋)
3つの選挙区で争われた衆院補選は、いずれも立憲民主党の候補が勝利した。立憲民主党がこの勢いを続けたら「政権交代もあり得る」という見方も現実味を帯びてきた。だが、私は否定的だ。立憲民主党は「自民党の自滅」と「共産党の支援」で勝ったにすぎない。
立憲民主党は、なぜ3連勝という「離れ業」ができたのか。
最大の理由は「自民党の自滅」である。それは自民党が東京15区と長崎3区で自前候補を擁立できなかった時点で明らかだった。候補を立てた島根1区でも、普通なら本来、負けるはずのない財務省出身の新人、錦織功政氏が、立憲民主党の元職、亀井亜紀子氏に惨敗した。
NHKの出口調査によれば、自民党支持層で約3割の有権者が亀井氏に投票していた。自民党vs立憲民主党の対立構図から考えれば、考えられない事態だ。支持政党が「特になし」の層では、亀井支持が7割以上に上った。それほど自民党は嫌われてしまったのである。
もしも、いま衆院解散・総選挙を行えば、同じ現象が全国で起きて、自民党は大敗北を喫するだろう。自民党議員が「岸田文雄首相による解散絶対阻止」に動くのも当然だ。
だが、総選挙で自民党が敗北したとしても、政権交代が起きるかと言えば、そう簡単ではない。立憲民主党が単独過半数をとるのは、ほとんどあり得ず、共産党との連立ないし協力が不可欠であるからだ。
それは、衆院補選の東京15区が象徴している。立憲民主党が擁立した酒井菜摘氏の勝利は、共産党が独自候補を降ろして、酒井支援に回った効果が大きい。自民党vs立憲民主党の一騎打ちになった島根1区も、NHK調査によれば、共産党支持層は、ほとんど立憲民主党候補の亀井亜紀子氏に投票していた。
つまり、立憲民主党が勝利するには、共産党支持層の獲得が大きな条件になる。だが、共産党は早くも「総選挙の対応は別だ」と言っている。仮に、立憲民主党と共産党の選挙協力が実現して、選挙に勝ったところで、政権を握るには他の野党との協力が不可欠になる。