国民年金の一時金を受けられる「特定中国残留邦人等」の認定申請を却下された旭川市の70歳代女性が国を相手取り、処分取り消しを求めた訴訟の控訴審で、札幌高裁(佐久間健吉裁判長、斎藤清文裁判長代読)は10日、却下処分を違法とする判決を言い渡した。
1審・札幌地裁は認定要件の「生年月日」を理由に請求を退けたが、高裁は樺太(ロシア・サハリン州)で一緒に暮らしていた女性の兄が認定を受けている点を重視。「生年月日の違いだけで処遇を変えるべきではない」と指摘した。
一時金の制度は、日本の敗戦後の混乱で中国国内や樺太に残らざるを得なかった人々の支援を目的としており、〈1〉1946年12月31日以前に生まれた〈2〉同日の後の生まれでも、帰国できない事情があった――などの要件を設けている。
原告の女性は50年代に生まれ、99年になって44年生まれの兄と一緒に永住帰国した。兄は生年月日の要件を満たしていたことから認定を受けた一方、国は女性の生まれ年に加え、「両親は帰国を希望していなかった」などの理由を挙げて申請を認めなかった。
1審も同様の判断をしたが、高裁は「父親の死後、母親は永住帰国を望みながら果たせなかった」と指摘。「女性にも帰国できない事情があった」とし、却下処分の取り消しを命じた。
厚生労働省によると、特定中国残留邦人等ではないとする国の認定が裁判で覆ったのは全国4例目。道内では初めてだという。同省は「国の主張が認められない厳しい判決。内容を検討し、関係機関と協議する」とコメントした。