石川県 羽咋 市の神社に地震おさえの霊石としてまつられている「地震石」があり、能登半島地震後、参拝者が相次いでいる。地元で石の存在が再認識され、SNSなどでも注目された。住民らは地震が再び起こらないよう願うとともに、「復興を祈る場として心のよりどころになれば」と話している。(金沢支局 高野珠生)
地震石がまつられているのは、同市寺家町の 大穴持像石 神社の入り口。石は地面に埋まっており、全体の大きさは不明だが、地表に縦約90センチ、横約50センチ、高さ約30センチが出ている。宮司の宮谷 敬哉 さん(45)によると、地震をおさえるとして古くから信仰され、「石がナマズの頭を押さえている」「石を汚した人がたたられた」などと言い伝えられてきた。
一般的に「地震の前にナマズが暴れる」という言い伝えは今も残る。茨城県鹿嶋市の鹿島神宮や千葉県香取市の香取神宮には、大地震を起こす地下のナマズを押さえつけていると伝わる「要石」がまつられている。要石は、新海誠監督の映画「すずめの戸締まり」にも登場し、話題を呼んだ。
羽咋市では、今回の地震で1人が死亡。住家約3300棟に被害が出て液状化に見舞われる地区もあった。大穴持像石神社では灯籠1基が倒れたものの、大きな被害がなかった。
人が常駐せず、社務所もない同神社で地震後、石の前には花や酒が絶えず供えられるようになったという。復興祈願祭が行われたことが報道されるなどして石が話題になったためで、地元の 糀田 幸雄さん(68)は「守ってくれてありがたいという思いが強くなった。これからも石を大切にしていきたい」と語る。
宮谷さんは「地鎮復興祈願符」のお札をつくり、無償配布を1月下旬に始めた。「自宅でも地震石を拝めるように」と思いついたという。市内計16か所で宮司を務めており、札は常駐している深江八幡神社だけで配っている。これまでに約1500枚に上る。宮谷さんは「地震石が復興を祈る場として、人々の心のよりどころになればうれしい」と話している。