ニュース裏表 安積明子 自民の衰退、立民の躍進は「本物」か つばさの党騒動でカムフラージュ、酒井菜摘氏の〝消極性〟自公とも「直接対峙」せず

ここ1カ月ほど内閣支持率が上昇(下げ止まり?)傾向を見せていた岸田文雄首相だが、それもいよいよ頭打ちとなったのかもしれない。
毎日新聞が18日と19日に実施した調査で、内閣支持率は20%と前月の調査から2ポイント下落した。
注目すべきは、政党支持率で、立憲民主党は前月から5ポイント増の20%となったのに対し、自民党は前月から3ポイント減の17%と逆転したことだ。
2009年の政権交代前夜を思い出す人も少なくないだろう。当時の民主党には不思議なまでの高揚感が満ちていたが、現在の立憲民主党にもそれに近いものが生まれつつあるかもしれない。
その根拠の1つが、立憲民主党が衆院3補選(4月28日投開票)で「3連勝」したことだといわれるが、果たしてどうか。
自民党は3補選で、島根1区を除いて候補者を擁立せず、いわば「場外で静観」していた。一方、東京15区では9人が乱立するなか、共産党や社民党の支持を得て、組織票を固めた立憲民主党の酒井菜摘氏に有利に選挙戦は進んだ。
酒井氏は、青年会議所などが主催した全候補対象の討論会に1人だけ出席しなかった。選挙戦最終日に豊洲で行われた「マイク納め」も早々に切り上げ、街宣車に乗って選挙区を回っている。
酒井氏にとって幸いだったのは、その〝消極性〟が「つばさの党」による公選法違反(自由妨害)事件の騒動でカムフラージュできたことだろう。昨年12月の江東区長選に出馬したことも、顔と名前を浸透させるうえで有利となった。何よりも幸運だったのは、自公与党と「直接対峙(たいじ)」しなかったことだ。
長崎3区は、次期衆院選で新2区と新3区に分かれる。今回の補選では、日本維新の会の井上翔一朗氏にダブルスコア以上で勝利した立憲民主党の山田勝彦氏は、正念場となるだろう。
〝本選〟となる次期衆院選は甘くない。立憲民主党が政権を狙うなら、単独で定数465の衆院の過半数を占めるくらいの勢いがなければならないが、小選挙区で擁立が決まった候補は直近178人で、目標の200人に届いていない。
要するに、自民党が沈みつつあるゆえに立憲民主党が浮き上がっているように見えるし、立憲民主党に本気の勢いがないゆえ、自民党は政権にしがみつけるというわけだ。
一方、岸田首相は「政治的延命」のため、衆院解散に踏み切らんと、ウズウズしているようだ。そもそも、政権交代が起こっていいのか悪いのか。それが判然としないまま、政治は漂流している。 (政治ジャーナリスト・安積明子)

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