富士山は20~21日、夏休みシーズン初となる週末を迎えた。夜通し登る「弾丸登山」を防ぐための登山規制で、夜間の登山道は昨年とは異なり、静寂に包まれていた。一方、山小屋前で仮眠を取る登山者が確認されており、山梨県は対応を検討する考えだ。
「平和な夜で素晴らしい。規制の効果が出ている」。8合目の山小屋「太子館」のスタッフで、富士山吉田口旅館組合の井上義景事務局長は、昨年との違いをそう表現した。20日夜は登山道を歩く人はほとんど見られず、静かだった。
富士吉田市が6合目で計測したデータでは、開山3週間(1~21日)の登山者は3万6471人。昨年同期比で5000人近く減った。読売新聞の分析では、ご来光目当ての弾丸登山者が含まれるとみられる午後9~11時台は53人で、昨年比95・3%減。正午前後を中心に登山者が微増しており、日中に「スライド」した可能性がある。
一方、夜間に山小屋前で仮眠を取ったり、とどまったりする登山者が確認され、新たな問題となっている。井上事務局長によると、13日は山小屋前で40~50人が保温効果のあるシートにくるまり、仮眠するなどしていた。その後、同様の事態はないが、「規制の効果が薄まる。これからがハイシーズンなので心配」とこぼす。
20日夜、本8合目の山小屋前のベンチで寝袋に入って仮眠していたベトナム人男性(28)は、午後2時過ぎから登山を始めたという。「日本一の山だから登りたかったが、山小屋の予約方法が分からなかった。次はちゃんと予約する。その方が安全だから」と話した。
山梨県は、国や地元、山小屋関係者と連携して対策するほか、大使館への協力要請も検討するという。長崎知事は18日の記者会見で「心ない登山者によって安全な富士登山が損なわれるのは極めて遺憾」と述べた。