宮崎県で震度6弱を観測した地震の影響で、マグニチュード(M)8~9級の南海トラフ巨大地震が起きる可能性が普段よりも高まり、各地で警戒が続いている。仮に発生した場合、超高層のビルやタワーマンションに長く大きな揺れをもたらす「長周期地震動」を伴うとみられ、揺れ幅は最大6メートルに及ぶという。どんな備えが必要なのか。
地震で生じる多様な周期の揺れ(地震動)のうち、揺れの1往復の周期が約2秒を超えるのが長周期地震動だ。ゆっくりとした大きな揺れで、地震の規模が大きいほど生じやすく、遠方に伝わる。
建物には揺れやすい固有の周期があり、地震動の周期と一致すると共振という現象で揺れが長く大きくなる。固有周期は主に建物の高さで決まり、内閣府によると、高さ100メートルの建物で2秒程度、高さ300メートルで5~6秒。高層建築ほど長周期地震動で大きく揺れ、同じ建物でも低層階より高層階の方が速く大きく揺れる。
平成23年の東日本大震災(M9・0)では、宮城県沖の震源から700キロ超離れた大阪市で、長周期地震動により超高層ビルの高さ約2百数十メートルにある最上階が約10分間、最大で2・7メートルの幅で揺れ、エレベーターが止まったり、防火扉などが壊れたりした。
南海トラフ巨大地震の発生時も、高層建築物が立ち並ぶ東京、名古屋、大阪の三大都市圏で、長周期地震動の影響が顕著になりそうだ。内閣府の有識者会議は、大阪市沿岸部の超高層ビルの最上階で、揺れ幅が約6メートルに及ぶと想定している。
長周期地震動の揺れについて、気象庁は4段階の階級を設けている。数字が大きいほど揺れが大きく、階級3では立っていることが困難になり、階級4になると、はわなくては移動できなくなる。昨年、階級3以上の地域の予測を緊急地震速報の発表基準に追加し、同年5月に石川県で震度6強を観測した地震で、予測が初めて発表された。
高層階にいて長周期地震動が予測されたらどうすればいいのか。防災システム研究所の山村武彦所長は「揺れで飛ばされけがをしないよう、柱などにつかまり体を支えることが大切だ」と話す。
家具や事務機器などが大きく動き、ぶつかってくる可能性もある。山村所長は「家具などを動かないよう固定したり、体を支えられる場所を確認したり、日常から備えてほしい」と指摘した。(伊藤壽一郎)