兵庫県の斎藤元彦知事の疑惑が告発された問題をめぐり、斎藤氏は20日の定例会見で、告発文書を作成した元県西播磨県民局長の男性(60)に対する聴取内容について、県の情報公開条例を理由に開示しないと説明した。しかし、これまでに「噂話を集めて作成した」との文言だけは男性の供述内容として公表。自身の判断の正当性を示す根拠としており、「恣意的(しいてき)な運用だ」「一部の発言を小出しにした卑怯(ひきょう)なやり方」との批判の声が上がっている。
「情報公開条例で人事管理に関する事務は非公開とされているので、公表することはできない」
会見で斎藤氏は、県側と男性とのやり取りを開示しない理由をこう説明。自身が公表したくないわけではなく、あくまで条例に基づいた対応だと強調した。
同条例は、公にすることで事業などの適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報は非公開とすると規定。懲戒処分に向けた聴取内容もこれに該当するという。
ただ、今月7日の会見で斎藤氏は、男性が告発文書について「噂話を集めて1人で作成した」と認めたと説明。このため、告発文書には「信ずるに足る相当な理由(真実相当性)」がなく、公益通報の対象外として男性を処分した対応は適切だったと主張した。
なぜ、非公開であるはずの聴取内容のうち「噂話」供述だけは公表できるのか。斎藤氏は「(文書に)真実相当性がないことを示すため、必要最小限の説明をした」と述べたが、男性はすでに死亡しており、反論ができない中、供述の信用性を担保することは重要だ。
どのようなやり取りで文言が出てきたのか。聴取を記録した音声データや、男性が署名した供述調書のような客観的な資料はあるのか。斎藤氏は「裏付けとなる調査記録は存在する」としたが具体的な説明は避け、「噂話」供述を事実として繰り返した。
内部告発に詳しい上智大の奥山俊宏教授は、こうした対応について、「録音や調書などの証拠を何も開示せず、外部の検証が不可能な状況で一部のみを小出しにして文書の真実相当性を否定している」と指摘。「こうした方法で男性をおとしめようとするのは卑怯で、『死人に口なし』を悪用しようとするものだ」と批判する。
その上で、「文書の内容が真実かどうかについては、客観的な調査を経なければ判定できず、告発された当事者が判断するのは適切ではない」と強調した。