河野太郎デジタル相(衆院神奈川15区)は5日、自民党総裁選に向けた政策発表記者会見に臨み、これまで雇用主が行っている年末調整を廃止し、全ての納税者に確定申告をしてもらう構想を公約に盛り込む方針を表明した。国が税や社会保険料などの所得データを一元的に管理することで支援が必要な人を迅速に把握する「デジタルセーフティーネット」の構築を目指すとしている。
公約説明文書に「移行期間を経た上で将来的には年末調整を廃止」と明記。「自動入力される確定申告に一本化することで事業者の事務負担を軽減。税務署の負担も増えないようデジタル化を進める」とした。会見の冒頭、新型コロナウイルス禍での支援金給付などの苦労を引き「必要なデータの適切な集約は危機下の迅速な支援につながる」と構想の意義を強調した。
河野氏は3日、自身のX(旧ツイッター)で「総理になったら実現したいこと」の具体策として総国民の確定申告構想に言及。4日には記者団の取材に「企業の手間がなくなる」などとメリットを挙げていた。SNS(交流サイト)上では法人関係者らから賛意の声が上がる一方で、新たに申告事務を課せられる人たちからは「手続きが面倒」「税務署がパンクしかねない」などの批判や疑問も相次いでいる。
これまでの会見などでは企業の手間やコストの削減に加え「所得情報を迅速に把握できることで、必要な人にピンポイントでプッシュ型支援を行うことが可能となる」と意義を強調。マイナンバーカード取得者向けサイト「マイナポータル」の活用などで「個々人の手間が増えることはない」と説明してきた。
意義については「全ての国民が確定申告を通して、税と社会保険料の負担額を認識してもらい、その使途に厳しい目を向けてもらえる」とも付言している。